2019年の永住許可ガイドライン改定以降、永住申請における年金の支払い状況は合否を左右する最重要項目と言ってよくなりました。
特に注意すべきは「納付済みかどうか」ではなく、「期限内に納めたか」が厳しく審査されるという点です。
たとえば、給与から天引きされる所得税や住民税は、会社が代わりに納めてくれるため、個人がミスすることはほぼありません。
一方、年金(特に国民年金)は、転職時や独立時に自分で切り替え手続きをしなければならず、うっかり数ヶ月の空白ができてしまうケースが後を絶ちません。
「後から払えば大丈夫だろう」という甘い認識で永住申請すると、ほぼ不許可になります。
本記事では永住審査で年金が厳しくチェックされる理由と、よくある失敗パターン、そしてリカバリー方法を実務視点で解説します。
2026年現在、永住審査での「年金」は最重要項目です
なぜ「税金」より「年金」が厳しいくらいなのか
永住許可ガイドラインでは、「公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付等)を適正に履行していること」が要件として明記されています。
さらに重要なのは、以下の一文です:
「申請時点において納税(納付)済みであったとしても、当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。」
(出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」より)
つまり、後から払っても「遅延」の事実は消えず、マイナス評価されるということです。
税金は「特別徴収(給与天引き)」で守られている会社員でも、年金は以下のタイミングで「自分で手続き」しなければならず、ミスが発生しやすいのが特徴です。
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会社を退職して次の就職まで空白期間がある(厚生年金→国民年金への切替)
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フリーランス・個人事業主になった
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配偶者の扶養から外れた(第3号→第1号への切替)
ガイドライン改定の経緯(2019年〜2025年)
2019年5月のガイドライン改定により年金・税金の支払い状況が「より厳格に」審査されるようになりました。ガイドライン改定以降は直近2年間の詳細な納付状況(月別)が必須書類となっています。
さらに、令和7年(2025年)10月の改訂でも、公的義務の履行については引き続き厳格な運用が維持されており、少しのミスも許されない状況が続いています。
不許可になる可能性が高い「3つの年金NGパターン」
永住申請の実務で特に多い、年金関連の不許可理由を3つ紹介します。
パターン1:厚生年金→国民年金の切り替え漏れ
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よくあるケース:
2024年3月末で会社を退職し、2024年6月から新しい会社に入社。この間の4月・5月分について、「無職だったから年金は払わなくていいと思っていた」または「手続きを忘れていた」というケース。 -
現実:
厚生年金の資格喪失日(退職日の翌日)から、次の会社で厚生年金に加入するまでの間は、国民年金への加入義務があります。たとえ1ヶ月でも未加入期間があると、永住申請では「公的義務の不履行」とみなされます。 -
審査官の視点:
「日本に永住する意思があるのに、制度を理解していない(または軽視している)」と判断されます。
パターン2:口座振替の残高不足による遅延
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よくあるケース:
国民年金を口座振替で支払っていたが、引き落とし日に残高不足で振替不能。後日、送られてきた納付書で支払ったが、「期限内納付」とはみなされない。 -
現実:
国民年金の納付期限は「翌月末日」です。
(例:4月分保険料の期限=5月31日)
口座振替が失敗し、6月に支払った場合、データ上は**「遅延」**として記録されます。 -
重要:
ねんきん定期便には「納付済」としか表示されませんが、入管は裏側の「納付日」まで見ています。
パターン3:配偶者(第3号被保険者)の届出漏れ
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よくあるケース:
会社員の夫の扶養に入っていた妻(第3号被保険者)が、パートの収入が増えて扶養から外れたにもかかわらず、第1号被保険者への切り替え手続きをしていなかった。 -
現実:
扶養から外れた時点で、自分で国民年金に加入し、保険料を支払う義務が発生します。手続きを怠ると、その期間は「未納」として記録されます。世帯全員の納付状況が見られるため、夫が完璧でも妻が未納なら不許可です。
「ねんきん定期便」だけでは不十分!正しい確認方法
「納付済」の文字に騙されるな(日付が大事)
多くの申請者が「ねんきん定期便に『納付済』と書いてあるから大丈夫」と思い込んでいますが、これは危険です。
通常のハガキ版ねんきん定期便には「納付の有無」は記載されていますが、「いつ納めたか(納付日)」は記載されていません。
永住審査では、入管が月別の納付日まで確認します。
ねんきんネットで「各月の納付状況」を見る方法
最も確実な確認方法は、「ねんきんネット」にログインし、「各月の年金記録」を印刷することです。
【手順】
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ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)にアクセス
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マイナンバーカード または ユーザIDでログイン
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「年金記録の一覧表示」→「月別の納付状況」を確認
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直近2年分を印刷(永住申請時の必須書類にもなります)
ここで、「納付日」が納付期限(翌月末)を超えているものがあれば、遅延として記録されています。
【ケース別】年金の遅れ・未納がある場合のリカバリー戦略
ケースA:数日〜1ヶ月の軽微な遅れ(理由書でカバーできる可能性あり)
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状況:
口座振替の残高不足で、納付期限から3日遅れで納付した。それ以外は直近2年間完璧。 -
リカバリー方法:
このケースは、「理由書」と「反省文」を添えることで、許可される可能性がないわけではありません。
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理由書のポイント:
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遅延の経緯(意図的ではないこと、口座残高の確認ミスなど)
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即座の対応(通知受領の翌日に支払ったこと)
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再発防止策(現在はクレジットカード払いに変更した、等)
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ケースB:数ヶ月の未納(現在は支払い済み)→ 待機期間が必要
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状況:
転職時に国民年金への切り替え手続きを3ヶ月間怠った。気づいて追納したが、納付期限からは半年遅れ。 -
リカバリー方法:
このケースでは、追納後、最低でも2年間は「期限内納付」の実績を積む必要があります。
審査官が見ているのは、「今後も安定して払い続けられるか」という点です。追納しただけでは「審査逃れのために一時的に払っただけでは?」と疑われます。
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タイムライン例:
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2024年4月〜6月:未納(転職時の手続き漏れ)
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2024年10月:気づいて追納
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2024年11月〜2026年10月:完璧な納付実績(2年間)
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2026年11月以降:永住申請が可能
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ケースC:現在進行形で未納 → 即座に支払っても、すぐには申請できない
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状況:
永住申請を考えて年金記録を確認したら、直近1年間に数ヶ月の未納があることが判明。 -
リカバリー方法:
まず、即座に未納分を全額納付してください(国民年金は過去2年分まで遡って納付可能)。
ただし、納付後すぐに永住申請しても、ほぼ確実に不許可になります。ケースBと同様、納付完了時点から新たに2年間の実績積み上げが必要です。
自分での判断は危険です。申請前に「年金診断」を
永住申請は一度不許可になると履歴が残る
永住申請は不許可になった履歴が入管のシステムに残ります。
年金未納が原因で不許可になった場合、「公的義務を軽視する人物」というマイナスイメージが記録として残り、次回の審査でも不利に働く可能性があります。
当事務所の「年金診断アドバイス」
当事務所では永住申請を検討されている方向けに年金記録の確認アドバイスを提供しています。
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「今申請すべきか、待つべきか」を正確に判断
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遅延・未納がある場合の具体的なリカバリープラン提示
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理由書の作成代行(必要な場合)
「転職経験がある」「ねんきん定期便を見てもよく分からない」という方は、自己判断で申請して不許可になる前にまずはご相談ください。
まとめ:「後から払えば大丈夫」は通用しない
2019年以降の永住審査では、年金の「期限内納付」が厳格にチェックされます。
たとえ1日でも遅れれば、不許可リスクがかなり高まります。
よくある失敗パターン:
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転職時の国民年金切り替え漏れ
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口座振替の残高不足による遅延
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配偶者(第3号)の届出漏れ
これらはいずれも「後から払えば済む」という甘い認識から生じるミスです。
重要なのは「払ったかどうか」ではなく、「期限内に払ったか」です。
永住申請を検討されている方は、まずねんきんネットで直近2年分の納付状況を確認してください。少しでも不安がある場合は自己判断せず、専門家(行政書士)にご相談ください。


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