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監理措置制度について-Q&Aを題材に-

監理措置制度は令和5年の入管法改正によって導入され、退去強制手続において収容によらない場合の基本となるものです。今回は出入国在留管理庁のホームページの「監理措置に関するQ&A」を題材に、改正後の監理措置制度の解説をしていきたいと思います。
今回も分量が多いので、複数回に分けての解説になります。


監理措置制度

制度全般


Q1監理措置とはどのような制度ですか。

A 監理措置は、監理人による監理の下、逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり、社会内での生活を許容しながら、収容しないで退去強制手続を進める措置です。

Q2監理措置を受けるための条件は何ですか。

A 監理措置の下で退去強制手続を進める決定(以下「監理措置決定」と言います。)を受けるためには、次の要件を満たすことが必要です。
【退去強制令書が発付される前の外国人の場合(法第44条の2第1項又は第6項)】
・監理人が選定できること。
・主任審査官が、監理措置決定を受けようとする外国人が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により受ける不利益の程度(心身の健康状態に与える影響や家族関係に与える影響等)その他の事情を総合的に考慮して、収容しないで退去強制手続を行うことを相当と認めること。

【退去強制令書が発付された外国人の場合(法第52条の2第1項又は第5項)】
・監理人が選定できること。
・主任審査官が、監理措置決定を受けようとする外国人が逃亡し、又は不法就労活動をするおそれの程度、収容により受ける不利益の程度(心身の健康状態に与える影響や家族関係に与える影響等)その他の事情を総合的に考慮して、送還可能のときまで収容しないことを相当と認めること。

Q3監理措置を受けているかどうかを確認するにはどうしたらよいですか。

A 監理措置決定を受けた外国人(以下「被監理者」と言います。)には、監理措置決定通知書が交付されます(法第44条の2第7項・法第52条の2第6項)。
 そのため、外国人が監理措置決定を受けているかどうかは、監理措置決定通知書の有無で確認することができます。

 監理措置決定通知書の確認ポイント(PDF)

Q4監理措置決定は取り消されることはありますか。

A 例えば、次に掲げる事由に該当する場合には、監理措置決定を取り消さなければならないとされています(法第44条の4第1項又は法第52条の4第1項)。
・監理措置決定に当たり、保証金を納付することが条件とされた場合において、被監理者が納付期限までに保証金を納付しなかったとき。
・監理人の選定が取り消された場合や監理人が死亡した場合等において、被監理者のために新たに監理人として選定される者がいないとき。
 また、例えば、次に掲げる事由に該当する場合には、監理措置決定が取り消されることがあります(法第44条の4第2項又は法第52条の4第2項)。
・被監理者が逃亡したときや逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるとき。
・被監理者が監理措置条件に違反したとき。
・被監理者が主任審査官に対して必要な届出をしなかったときや虚偽の届出をしたとき。
・被監理者が不法就労活動をしたとき(報酬を受ける活動の許可を受けずに働いた場合も含む。)。

Q5監理措置に関して分からないことがあるときは、どうしたらいいですか。

A 監理措置に関して分からないことがあるときは、最寄りの地方出入国在留管理官署にお問い合わせください。
 また、被監理者や監理人の方は、被監理者の事務を担当している地方出入国在留管理官署にお問い合わせください

出入国在留管理庁「監理措置に関するQ&A」より引用

今回の改正法で新たに導入された監理措置制度が退去強制手続きの収容しない場合の原則の制度となりました。そのため改正前の仮放免制度では収容されている外国人が健康上の理由など、比較的広範な理由で一時的に収容を解除されることが可能でしたが、改正後はこの適用がより厳格になり、仮放免が許可されるのは主に健康上または人道上の理由に限られるようになり、これまでよりも条件が厳しくなっていると考えられています。

監理措置制度は退去強制手続きの収容に変わる選択肢として創設され、当該外国人が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により受ける不利益の程度等を考慮して相当な場合には監理人による監理に付し、収容せずに手続きを進めることとするとともに、収容する場合であっても3カ月ごとに監理措置に付するか否かを見直すようにして収容の長期化を防止する制度とされています。

改正入管法では退去強制令書の発付前後で監理措置の内容が異なることになります。退去強制令書の発付前の「収令監理措置」と発付後の「退令監理措置」です。両者の共通点は主任審査官が監理人による監理の下で社会内での生活を許容し、収容しないで退去強制手続を進める点です。ただし退令監理措置では報酬を得る活動が認められない点が主に収令監理措置と異なる点になります。

被監理者


Q6被監理者が守らなければならないことはありますか。

A 被監理者は、監理措置決定通知書に記載されている監理措置の条件を守る必要があるほか、定期的な届出義務を履行しなければなりません(法第44条の2第1項、法第44条の6など・Q8・12参照)。
 また、監理措置決定通知書は携帯・提示義務があります(法第23条第1項又は第3項・Q7参照)。

Q7被監理者は、外出するときに監理措置決定通知書を持ち歩かなくてもよいですか。

A 被監理者は、在留カードを持っている場合を除いて、監理措置決定通知書を常に携帯しなければなりません(法第23条第1項)。
 また、入国審査官、入国警備官、警察官、地方公共団体の職員といった権限ある官憲に要求されたときは、監理措置決定通知書を提示しなければなりません(法第23条第3項)。
 監理措置決定通知書を携帯しなかった場合や、提示を拒んだ場合には、処罰を受けることがあります(法第76条)。

Q8監理措置の条件とはどのようなものですか。

A 監理措置決定通知書には、被監理者が守らなければいけない条件として、例えば次に掲げる条件が記載されています(これを「監理措置条件」と言います。以下同じ。(法第44条の2第1項・法第52条の2第1項など))。
・住居の指定
・行動範囲の制限
・呼出しに対する出頭の義務
・その他逃亡等を防止するために必要と認める条件
 また、これらの条件に加えて、300万円を超えない範囲内で保証金を納付することが条件とされる場合があります(法第44条の2第2項又は法第52条の2第2項)。
 なお、この場合において、保証金を期限までに納付しなかったときは、監理措置決定が取り消されます。

Q9行動範囲は具体的にどのように制限されるのですか。

A 行動範囲は、原則として、被監理者の指定住居の属する都道府県の区域内に制限されます(施行規則第36条の2第1項第2号又は同条第2項第2号)。ただし、被監理者が未成年者又は高等学校等に在学している者であって、通学状況が明らかであると認められる場合には、行動範囲が制限されない場合があります。
 被監理者が、行動範囲外へ赴く必要が生じたときは、地方出入国在留管理官署に行動範囲の拡大を申請し、その許可を得てください。

Q10その他逃亡等を防止するために必要と認める条件とは具体的にどのような条件ですか。

A 「逃亡及び証拠の隠滅の禁止」又は「逃亡及び就労の禁止」のほか、被監理者の個別の事情に応じて、必要な条件が付されます(施行規則第36条の2第1項第4号又は同条第2項第4号)。

Q11保証金は、どのぐらいの金額を払うことになりますか。

A 保証金の金額は、300万円以下(未成年者の場合には150万円以下)の範囲内で被監理者の逃亡又は証拠の隠滅(不法就労活動)を防止するに足りる相当の金額とするとされていますが、具体的な金額は、被監理者の個別の事情により決定されます(施行規則第36条の2第4項又は同条第5項)。

Q12被監理者の届出とはどのようなものですか。

A 被監理者は、当該被監理者の事務を担当している地方出入国在留管理官署の主任審査官に対して、例えば、次に掲げる事項を届け出なければなりません(法第44条の6又は法第52条の5・施行規則第36条の8第2項)。
・監理措置条件の遵守状況
・被監理者の生活状況
・監理人との連絡状況
 また、届出日は、被監理者が監理措置に付された日又は直近に届出をした日から3月を超えない範囲内で、主任審査官が指定することとされており(施行規則第36条の8第1項)、その場合には、「届出日指定書」が交付されます。

Q13被監理者が条件に違反したときの罰則等はありますか。

A 監理措置に付された条件等に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じない被監理者は、1年以下の懲役若しくは20万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨規定されています(法第72条第3号)。
なお、被監理者は、例えば、次に掲げる事由に該当するときは、監理措置決定が取り消されることがあります(法第44条の4第2項又は法第52条の4第2項)。
・主任審査官に対する監理措置条件の遵守状況等の届出をしなかったときや虚偽の届出をしたとき。
・監理措置の条件に違反したとき。
・逃亡したり、正当な理由がないのに呼出しに応じないとき。

出入国在留管理庁「監理措置に関するQ&A」より引用

監理措置制度の被監理者は被監理者が住居及び行動範囲の制限など、守らなければいけない様々な条件を付されることになります。行動範囲は原則として被監理者の指定住居の属する都道府県区域及び被監理者に係る事務取扱官署の経路に制限されることになります。
ただし被監理者が未成年者又は高等学校等に在学している者であって通学状況が明らかであると認められる場合には、「主任審査官が特別の事情があると認めて別に定めた場合」として行動範囲が制限されない場合があります。
住居の変更や行動範囲の拡大は、それぞれ許可の必要性を疎明する資料を添えて許可の申請を行う必要があります。

主任審査官は逃亡及び証拠の隠滅を防止するために必用と認めるときは300万円以下(未成年者の場合には150万円以下)の範囲内で保証金を指定日までに納付することを監理措置に付するための条件とすることができます。
保証金の納付を条件とするか、条件とした場合にいくらとするかは住居、資産など様々な考慮要素がありますが、やはり逃亡及び証拠の隠滅を防止するためであることから摘発によるものか自ら出頭したものか、過去の逃亡歴などが重要となりそうに思われます。

なお、被監理者が逃亡したり正当な理由なく呼び出しに応じない場合は刑事罰の対象となります。

申請手続

Q14監理措置決定の申請は誰ができますか。

A 監理措置決定の申請は、原則として、監理措置決定を受けようとする外国人本人が行うこととされています(法第44条の2第4項又は法第52条の2第4項)。
 ただし、監理措置決定を受けようとする外国人が16歳に満たない場合又は疾病その他の事由により自ら監理措置決定の申請をすることができないときは、次に掲げる者(16歳に満たない者を除く。)であって当該外国人と同居するものが、次の順序により、当該外国人に代わって申請することができます(法第44条の2第5項又は法第52条の2第7項)。
 (1) 配偶者
 (2) 子
 (3) 父又は母
 (4) (1)~(3)以外の親族

Q15監理措置決定の申請をするにはどうすればよいですか。

A 監理措置決定の申請をする場合は、申請しようとする本人が、必要な事項を記入した申請書等を地方出入国在留管理官署の窓口に提出してください(施行規則第36条の2第8項)。また、監理措置決定の申請を郵送で行うことはできません。
 監理措置決定の申請をするときは、監理措置決定申請書に加えて、例えば、次に掲げる書類が必要となります。
・監理人承諾書兼誓約書
・監理人になろうとする者の身分等を証明する資料(運転免許証や在留カードなどの身分証明書)
・監理措置決定を受けようとする者の収入や資産を疎明する資料(通帳の写しや住民税の課税・納税証明書等)
・監理措置決定を受けようとする者が住む予定の住居を明らかにする資料(賃貸借契約書の写し等)
・監理措置決定の申請をする理由を疎明する資料
 また、親族等が、被監理者になろうとする外国人に代わって監理措置決定の申請をしようとするとき(Q14参照)は、申請書等に加えて、例えば、次に掲げる書類を提出しなければなりません。
・当該外国人に代わって申請をしようとする人の身分を証明する資料
・当該外国人に代わって申請をしようとする人が、当該外国人と同居する親族等であることを証明する資料
 なお、仮放免されている人が申請する場合には、当該者の仮放免事務を担当している地方出入国在留管理官署の窓口に申請書等を提出してください。また、入管施設に収容されている人が申請する場合には、申請書等を担当の職員に直接提出してください。

出入国在留管理庁「監理措置に関するQ&A」より引用


監理措置制度は退去強制手続上の制度ですので不法残留している外国人が自ら出頭するか、入国警備官の調査による摘発から主任審査官への通知で始まります。
職権でしか監理措置に付することができない場合を除き、監理措置の申請は監理措置決定を受けようとする外国人本人が行うこととされています。
監理措置決定を受けようとする外国人が16歳に満たない場合又は疾病その他の事由により自ら監理措置決定の申請をすることができないときは同居の親族などが当該外国人に代わって申請することができるとされています。

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