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設立1年未満・決算書なしの新設法人で「技術・人文知識・国際業務」を取る難易度と、追加で求められる「事業開始能力」の証明資料

就労ビザ

「会社を設立したばかりで決算書がない。この状態で外国人の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)は取れるのか?」——新設法人の経営者や人事担当者から、こうした不安の声が数多く寄せられます。
大手のポータル系サイトには「登記簿があれば大丈夫」「会社規模は関係ない」と書いてある事が多いようですが、現実はそこまでは甘くありません。

新設法人(設立1年未満で決算書なし)は、入管の企業分類(カテゴリー分け)では「カテゴリー4」に該当し、上場企業や大企業(カテゴリー1~2)に比べて提出書類が圧倒的に多く、審査も厳しくなります。なぜなら入管は、「ビザ取得だけを目的にしたペーパーカンパニー(実体のない会社)ではないか?」という疑念を常に持っているからです(厳しい理由はそれだけではありませんが)。

しかし正しい知識を基に準備をすれば新設法人でもビザ許可は十分可能です。 決算書がない代わりに「事業計画書」と「事業開始能力(会社の実体)の証明資料」を徹底的に揃えることで、入管の様々な疑義を払拭できます。
本記事では新設法人が技人国ビザを取得するための現実的な難易度、入管が警戒する様々な疑義の内容、そして実際に許可を勝ち取るための資料リストと事業計画書の書き方まで、申請取次行政書士の実務経験に基づき徹底解説します。


新設法人は「カテゴリー4」。審査は甘くないが対策はある

結論

新設法人(決算書なし)は入管の企業分類で「カテゴリー4」に分類され、大企業に比べて提出書類が多く審査も厳格です。しかし、事業計画書と会社の実体証明があれば許可可能性はあります。


解説

入管は申請企業を以下の4つのカテゴリーに分類しています。


カテゴリー 該当企業 提出書類の量
カテゴリー1 上場企業、保険会社、地方公共団体など 最小限
カテゴリー2 前年の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業 少ない
カテゴリー3 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(源泉徴収税額1,000万円未満) やや多い
カテゴリー4 新設法人、個人事業主、源泉徴収票を提出できない企業 最も多い

新設法人は、法定調書合計表(源泉徴収の実績)が出せないため、自動的にカテゴリー4となります。これにより、「会社がまともに存在し、事業が回る見込みがある」ことを一から全て証明する責任が課されます。

なぜこれほど厳しいのか?
過去に「ビザを取るためだけに作った会社(ペーパーカンパニー)」で不法就労を助長する事件が起きていたこともあり、入管が新設法人について警戒心をもっていることがいろいろなところで説明されています。確かにそれも理由の一つではあるのですが、やはり新設の会社では実績がなく、会社の継続も雇用した外国人社員に給料を払い続けることができるのかも入管からは疑問があるからです。。
逆に言えば、「実体がある」そして「会社を安定して継続でき、社員にちゃんと給料を払い続けることができる」ことをしっかり立証できれば、新設法人でも許可は出るということです。


もう一つ必要と言えることとして会社の業務にその外国人が必要である、言い換えればその外国人でないと難しい専門的な仕事がある、ということが挙げられます。ただしこれは他のカテゴリーでも同様のことです。

まだ「決算書がない」=「事業計画書」が命綱

結論

決算書がない新設法人は、代わりに「事業計画書」の提出が必須です。ただし銀行融資用のような重厚なものではなく、基本的にはA4用紙2~3枚で「外国人の給与を払える根拠」を示せば内容としては十分といえます(ケースによる)。


解説:技人国ビザ用の事業計画書はどのくらいの内容が必要か

銀行融資用や経営・管理ビザの場合、場合によっては事業計画書は数十ページに及ぶこともありますが、技人国ビザではメインの内容として「この会社は潰れない。外国人に約束した給料を払い続けられる」ことが示せればOKといえます。

入管が見ているポイント


  • 事業内容が具体的か(誰に、何を、どう売るのか)

  • 売上の見込みに根拠があるか(希望的観測だけではないか、契約の見込みはあるか)

  • 人件費・経費を差し引いても利益が出るか

  • 外国人社員の役割が明確か(なぜその人が必要なのか、ただしこれは別に雇用理由書を作成してもOK)

銀行融資用との違い
銀行は「成長性」や「将来のビジョン」を重視しますが、入管は「堅実さ」と「給与支払能力」を重視します。派手な成長戦略は不要で、地味でも確実に回る計画を示すことが大切です。
また、申請者の経営者としての能力を見る経営管理ビザのものとも違うわけです。


入管が警戒する「ペーパーカンパニー」とは

結論

入管は「ビザ目的だけの実体のない会社」を警戒しており、新設法人には「本当に事業をやっているのか」の立証責任が重くのしかかります。


解説:審査官は何を見ているのか

審査官は以下のような点を厳しくチェックしていると思われます。


  • 事務所は実在するのか?

  • 固定電話はあるのか?(携帯だけよりは固定電話がある方が事業実態を疑われにくいといえるが、時代と共に変化しつつあるので今はそこまでか)

  • 実際に業務をしているのか?(取引先はあるか、売上は立っているか)

  • 資本金はちゃんと入金されているのか?(登記だけして実際には金がない?)

ペーパーカンパニーと見なされやすくなると思われるパターン


  • 事業の根拠として考えにくい事業拠点(住居用物件で看板もなし)

  • ホームページがない、名刺もない

  • 取引先や契約書が一切ない

  • 社長と外国人社員の2人だけ、他に社員がいない

これらに該当する場合入管に疑念を持たれる可能性が高くなるため、単に登記簿があるだけでは不十分であることが多くなります。「実体」を示す追加資料をなるべく用意するようにしましょう。


「事業能力」を証明する資料リスト

結論

法定の必須書類(登記簿謄本など)に加え、オフィスの実体・取引の実体・資金の実体を証明する補強資料を提出することが、新設法人でビザ申請を成功させるポイントになります。


具体的な補強資料リスト

■ オフィスの実体を示す資料


  • 事務所の外観・入口(社名看板)・執務スペースのカラー写真
    ※PC、電話機、デスク、書類が写っていて「実際に人が働ける環境」であることを示すことが重要です。スマホ撮影でOKで、別にカメラマン等は必要ありません。

  • 賃貸借契約書(使用目的が「事業用」「事務所」となっているか確認)
    ※住居用物件を無断で事業使用している場合は不許可リスクを高める可能性があります。貸主の使用承諾書が必要になることも。

  • 許認可が必要な事業な場合は許可を証明するもの
    ※許認可が必要な事業であれば許可を証明する資料を用意しましょう。

■ 取引の実体を示す資料


  • 取引先との基本契約書、注文書、見積書
    ※まだ売上が立っていなくても「商談中」の証拠として見積書やメール履歴が有効。

  • 会社案内パンフレット、ホームページの印刷
    ※「対外的に事業をアピールしている」証拠になります。

  • 名刺のコピー
    ※地味ですが「会社としての体裁を整えている」印象を与えます。

■ 資金の実体を示す資料


  • 法人口座の通帳コピー(資本金が入金されているページ)

  • 設立時の経費支出の領収書(PC購入、内装工事、備品など)
    ※「ちゃんとお金を使って事業準備をしている」証拠になります。

他に例えば新設法人と言ってもすでに事業を行っている企業の新しいグループ企業としての新設法人の場合、グループ企業との関係性を示す資料なども財務関係の証明になります。

【実践編】入管用・簡易事業計画書の構成テンプレート

結論

事業計画書はもちろんケースにはよるものの、基本的にはA4用紙2~3枚で必要な事が記載されていれば十分であるといえます。「事業内容」「外国人社員の役割」「収支計画」「資金繰り」の4項目を重点的に記載し、入管の納得が得られるようにしましょう。


例(必要に応じて調整を)

1. 事業内容(5W1H形式で)


  • 誰に(ターゲット顧客)

  • 何を(商品・サービス)

  • どうやって(販売方法、営業手段)

  • 例:「当社は、中小製造業向けに、業務効率化のためのITシステム導入支援を行います。既存の取引先として〇〇社(商談中、見積書添付)があり、今後も〇〇業界を中心に営業活動を展開します。」

2. 外国人社員の役割
その事業の中で、なぜ外国人社員が必要なのかを具体的に記載(別に理由書を作成しても可)。


  • 例:「当社が扱うシステムは海外製であり、英語マニュアルの翻訳および海外ベンダーとの技術折衝が必須です。〇〇氏(外国人社員)は、情報工学専攻かつ英語堪能であり、この業務を担当します。」

3. 収支計画表(1年分)


項目 金額(年間) 算出根拠
売上高 1,200万円 単価100万円×年間12件(見込み客リスト別添)
人件費 600万円 社長300万円+外国人社員300万円
経費 300万円 家賃120万円、通信費・交通費等180万円
営業利益 300万円 黒字
※「希望」ではなく「根拠ある数字」であることが重要です。

4. 資金繰り計画
当面の運転資金はどう確保しているか。


  • 例:「資本金500万円を元手に、初年度の人件費・経費を賄います。売上が立つまでの3か月間は、資本金の範囲内で運転資金を回します。」

よくある失敗事例(不許可パターン)とその対策

結論

新設法人の不許可理由の多くは「事業の実体が証明できなかった」「事業計画が甘すぎて継続性や給与支払い能力に疑問符が付いた」の2つであるといえます。事前に失敗パターンを知っておけば回避できます。


失敗事例と対策

失敗例1:バーチャルオフィスやシェアオフィス(個室なし)その他で事業の実体に疑問符
事業所の実在に疑問符が付いた結果、会社の存在にも疑義が持たれることに。もちろん最近の事情からバーチャルオフィスやシェアオフィスの利用を否定することはナンセンスですが、利用する場合は事業所の実在を証明する資料を準備しておくことが望ましいでしょう。


  • 対策: 独立した執務スペース(個室またはパーティション区切り)を確保する。レンタルオフィスの場合は「専有区画」の契約書を添付。

失敗例2:事業計画書の売上が「希望的観測」だけ
「頑張って営業します」「SNSで集客します」など、根拠なし。


  • 対策: 「既に〇〇社と商談中(見積書添付)」「過去の人脈で〇〇社から引き合いあり(メール履歴添付)」など、具体的な証拠を示す。

失敗例3:資本金が極端に少ない(例:10万円)
「この金額で1年間人件費を払えるのか?」と疑われる。


  • 対策: 資本金が少ない場合は、社長の個人預金残高証明や、親会社・スポンサーからの資金支援契約書を追加提出して資金力を補強する。

実務担当者へのアドバイス:専門家への依頼が望ましいラインは

結論

資本金が潤沢で、オフィスも整っている場合は自力申請も。しかし少しでも不安要素があるなら、申請取次行政書士に相談したほうが不許可リスクを減らすことができます。

自力で申請しても許可の可能性が高いケース


  • 資本金がある程度高い

  • 事業用オフィスを正式に賃貸契約している(看板、固定電話あり)

  • 既に売上が立っている、または取引先と契約済み

  • 事業計画書を書くことに慣れている

申請取次行政書士への依頼も視野にいれておきたいケース


  • 資本金が300万円以下

  • 自宅兼事務所、またはバーチャルオフィス

  • 売上がまだゼロ、取引先もこれから開拓

  • 事業計画書を一度も書いたことがない

  • 「ペーパーカンパニーと思われないか」不安

人材紹介会社ポータル等の記載をそのままあてはまてもよいのか?
大手人材ポータルサイト等の記載は基本的には採用させることが目的であるので難しい条件での想定がなされているか疑問で、ビザが不許可になった場合その責任はもちろん会社が負うことになります。新設法人という不利な立場でビザを取るならその条件を理解した上で最初から万全の準備で臨むことを強く推奨します。


まとめ

新設法人(決算書なし)でも、技術・人文知識・国際業務ビザの取得は十分可能です。ただし、カテゴリー4として厳しい審査を受けることを覚悟し、「実体」を証明するための資料を徹底的に揃えることが成功の鍵です。


  1. 事業計画書は基本的にはA4 2~3枚で良いが(もちろんケースによる)、根拠ある数字を入れること

  2. オフィス写真、契約書、固定電話請求書など「実体」を示す資料を豊富に用意すること

  3. 「ペーパーカンパニーではない」ことを先回りして証明すること

「登記簿があれば大丈夫」というような甘めともいえる情報に流されず、現実の審査基準を理解し最初から正しい準備をすることで、新設法人でも外国人採用を成功させる可能性がでてきます。不安な方は、まず一度申請取次行政書士に相談し、自社の状況が「自力申請可能か」「専門家に任せるべきか」の判断を仰ぐことをお勧めします。

この記事を書いた行政書士は
勝見 功一

はじめまして。京都市上京区でビザ申請手続きのお手伝いをさせていただいております申請取次行政書士の勝見です。
まだまだ若輩者ですが、持ち前のフットワークの良さを活かして迅速かつ誠実に対応させていただきます。初回の相談は無料ですのでまずはお気軽にお問い合わせ下さい。
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