「スピード違反で捕まった…次のビザ更新は大丈夫だろうか」
「駐車違反を何回かしてしまったが、申告しないとバレるのか」
外国人の方から、こうした不安の相談が寄せられることがあります。
結論から言えば、軽微な交通違反(青切符)が1~2回ある程度では、就労ビザ更新が直ちに不許可になることは通常考えにくいです。
ただし、違反の回数・内容・申告の仕方によっては審査でマイナス評価となり、最悪の場合は不許可や在留資格取消のリスクもあります。
特に危険なのは、「軽微だから隠しても大丈夫だろう」という自己判断です。入管は必要に応じて警察庁のデータを照会でき、虚偽申告が発覚すれば「違反そのもの」より「嘘をついたこと」が重く評価されます。
本記事では、交通違反がビザ更新に与える影響の実態、「隠すと余計にマイナスになる」メカニズム、違反内容・回数別のリスク目安、そして不許可を回避するための「反省文・理由書」の書き方まで、行政書士の実務経験に基づき本音で解説します。
ビザ更新で問われる「素行善良要件」と交通違反の基本
結論
入管審査では「素行が善良であること」が評価されますが、就労ビザ更新と永住申請では厳しさが全く異なります。 就労ビザ更新なら軽微な違反1~2回で即アウトにはなりませんが、永住申請では数回の青切符でも不許可理由の一因になりえることがあります。
解説:素行善良要件とは
「素行善良」とは、法令を遵守し、社会的に問題のない生活を送っていることを指します。入管法上、特に永住許可の要件として明文化されていますが、就労ビザ更新でも「日本社会で問題なく生活できているか」は当然見られます。
就労ビザ更新と永住申請の違い
| 申請種別 | 交通違反への厳しさ | 備考 |
|---|---|---|
| 就労ビザ更新 | 比較的緩やか | 軽微な違反1~2回なら通常は致命傷になりにくい |
| 永住申請 | 非常に厳格 | 過去5年で複数回の違反があると不許可リスクが上がる |
就労ビザ更新では安定した収入・納税・在留状況など総合的に判断されるため、交通違反だけで即不許可になるケースは少ないです。しかし永住申請では「素行善良」が明確な許可要件であり、軽微な違反でも回数が重なると致命的になる場合もあります。
交通違反の種類別に見た影響のイメージ
結論
青切符(反則金)レベルなら「注意」程度、赤切符(罰金刑)レベルなら「要注意」で理由書・反省文が必須です。執行猶予付きであっても懲役・禁錮刑となった場合は上陸拒否事由に該当し、「更新はほぼ不可能」となります。
解説:青切符と赤切符の違い
青切符(反則金で済む違反)
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軽度のスピード違反(一般道で30km/h未満超過など)
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一時不停止、信号無視(軽微なもの)
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駐車違反、シートベルト未着用
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※2026年頃から自転車の青切符導入予定(要注意)
→ 前科はつかず、反則金を払えば終了。就労ビザ更新では「よほど頻発していなければ」大きな問題にはなりにくい。
赤切符(罰金刑・前科がつく違反)
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高速道路で40km/h以上、一般道で30km/h以上の速度超過
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酒気帯び運転・酒酔い運転
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無免許運転
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ひき逃げ・当て逃げ
→ 刑事手続きとなり、罰金刑が科されれば前科扱い。就労ビザ更新でも「理由書・反省文」が必須となり、永住申請では数年間の「クールダウン期間」が必要。
違反レベル別の影響イメージ
| 違反レベル | 就労ビザ更新への影響 | 永住申請への影響 |
|---|---|---|
| 青切符1~2回(数年間で) | ほぼ影響なし | 軽微だが申告必須 |
| 青切符3~5回(短期間集中) | 注意レベル、説明が望ましい | かなり不利、時期見直し推奨 |
| 赤切符・罰金刑 | 要注意、理由書・反省文必須 | 数年間は申請見送り推奨 |
| 1年以上の懲役・禁錮(執行猶予含む) | 上陸拒否事由に該当し、更新ほぼ不可能 | 上陸拒否事由に該当し、ほぼ不可能 |
【上陸拒否事由に該当する場合はほぼ更新不可】
交通違反であっても、1年以上の懲役・禁錮刑(執行猶予付きを含む)を受けた場合は、入管法第5条の「上陸拒否事由」に該当します。この場合、在留資格の更新・変更は原則として認められず、反省文や理由書でリカバリーできるレベルではありません。
例えば、危険運転致死傷罪や悪質な酒酔い運転で懲役刑(執行猶予含む)を受けた場合、刑の執行終了または執行猶予期間満了から一定期間(通常5年以上)が経過するまで、日本での在留資格維持は極めて困難です。
本記事で解説している「反省文・理由書で対応可能」なケースは、あくまで上陸拒否事由に該当しない範囲の違反(青切符・罰金刑レベル)が前提です。懲役・禁錮刑を受けた方、受ける可能性がある方は、速やかに専門家に相談してください。
「隠すと余計にマイナスに?」:入管と警察データの関係
結論
永住申請と異なり、就労ビザ更新で入管が全件について警察照会を行うわけではありませんが、「入管法第59条の2に基づく調査権限」は存在し、また申請書には「交通違反等による処分も含む」処分歴を記載する欄があり、ここに虚偽の記載をすれば「虚偽申告」となります。また、将来の永住申請時には先述の通り警察照会が行われるため、過去の就労ビザ更新時に違反を隠していたことが発覚し、「以前から虚偽申告を繰り返していた」と評価されるリスクがあります。
解説:申請書の「処分歴」欄の正しい書き方
在留期間更新許可申請書には「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無(交通違反等による処分も含む)」という欄があります。この「交通違反等による処分も含む」という文言が追加された背景には、「青切符は書かなくてよい」と自己判断する申請者が多かったことへの対応があると言われています。
基本方針:正直に申告する
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青切符(反則金)であっても、聞かれている以上は申告するのが安全
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「軽微だから」「昔のことだから」という自己判断は危険
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記載欄が足りなければ「別紙参照」とし、別紙で違反日時・内容・処分を一覧にする
なぜ隠すと危険なのか
入管は審査上必要と判断すれば「入管法第59条の2に基づく調査権限」で警察庁・検察庁に照会をかけることができます。特に以下のケースでは照会される可能性が高まります。
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永住許可申請(全件照会されると考えた方がよい)
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過去に入管から指導・警告を受けたことがある
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申請内容に不審点がある
虚偽申告のリスク
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「違反があるのに”なし”と書いた」ことが発覚すると、違反そのものより「虚偽申告」が重く評価される
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最悪の場合、在留資格取消・退去強制の対象になる可能性も
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一度「嘘をつく人」というレッテルが貼られると、今後のあらゆる申請で不利になる
結論:隠すメリットはゼロ、リスクは甚大です。 正直に申告し、必要なら反省文を添えるのが最も安全な対策です。
不許可を避けるための「反省文・理由書」の考え方
結論
反省文では「事実→経緯→処分→再発防止策」の4要素を簡潔に書きます。「運が悪かった」「忙しかった」などの言い訳は厳禁。具体的な再発防止策(車を手放す、運転頻度を減らす等)を盛り込むことが重要です。
反省文で必ず押さえるべき4要素
① 事実関係
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いつ、どこで、どんな違反をしたか
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処分内容(反則金○円、罰金○円、免許停止○日など)
② 違反に至った経緯
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なぜそのような行為をしてしまったのか
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※言い訳ではなく、客観的な状況説明
③ 違反後に受けた処分と対応
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反則金・罰金の納付状況(領収書コピーを添付するとベスト)
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違反者講習の受講有無
④ 再発防止策(最重要)
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今後どうやって同じ過ちを繰り返さないか
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具体的な行動変容(例:車を手放した、通勤を電車に変えた、家族に運転を任せるようにした等)
NGな文章とOKな文章の方向性
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❌ NG例: 「仕事が忙しく、急いでいたため仕方なかった」「運悪く警察に見つかってしまった」
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⭕ OK例: 「自分の判断の甘さが招いた結果であり、深く反省しております」「再発防止のため、○○年○月に自家用車を売却し、現在は公共交通機関のみを利用しております」
ポイント:「反省」だけでなく「行動で示す」ことが審査官の心証を良くするといえます。
就労ビザ更新と永住申請での評価の違い
結論
就労ビザ更新では基本的には「よほど悪質でなければ」交通違反だけで不許可にはなりにくいといえますが、永住申請では軽微な違反の積み重ねでも不許可になるリスクは高まります。将来の永住を見据えるなら、今から「違反ゼロ」を目指すべきです。
解説:就労ビザ更新の場合
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)の更新審査では、主に以下が見られます。
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引き続き同じ業務に従事しているか
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給与・待遇は適正か
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税金・社会保険は納付しているか
交通違反は「在留状況」の一部として評価されますが、他の要素が良好であれば、軽微な違反1~2回で即不許可になることは実際のところ稀です。ただし短期間に違反が集中している場合や、罰金刑がある場合は、理由書・反省文で誠実に説明する必要があります。
解説:永住申請の場合
永住許可では「素行善良要件」が明確な許可条件として設定されており、交通違反への評価は格段に厳しくなるといえます。実務上のとりあえずの目安としては以下の通りです。
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過去5年間の違反歴が重点的にチェックされる
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青切符でも「過去5年で5回以上」または「直近2年で2回以上」あると不許可リスクが高まるのではと思われる(実務上のだいたいの相場といわれる)
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罰金刑がある場合、刑の執行終了から最低5年間は申請を見送るのが無難と思われる
実務上のアドバイス
「今は就労ビザ更新だけを考えている」という方でも将来の永住を視野に入れるなら、ここ数年は違反ゼロを維持することを強くお勧めします。一度ついた違反歴は消えないからです。
会社への影響と報告の仕方
結論
多くの企業では「罰金刑・免許停止」レベルの違反は就業規則上の報告義務があります。就労ビザ更新では会社が申請書類に関与するため、重い違反は露見しやすい構造といえるでしょう。
解説:会社に言うべきか?
会社への報告が必要と思われるケース
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罰金刑を受けた場合(多くの就業規則で報告義務あり)
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免許停止・取消を受けた場合(業務に車を使う場合は特に)
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逮捕・勾留された場合
就労ビザ更新との関係
就労ビザの在留期間更新許可申請では、多くの場合、会社(所属機関)が申請書類の作成・提出に関与します。申請書の「処分歴」欄に違反を記載すれば、会社の担当者の目に触れる可能性があります。
実務的なアドバイス
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軽微な青切符1~2回なら、会社に大騒ぎする必要はないと思われるが、申請書には当然正直に記載する
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罰金刑レベルなら、会社の人事・総務に事前に相談しておく方が、後でバレるよりかなり印象が良い
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「入管にバレないように」「会社にバレないように」という発想自体が危険
専門家への相談が望ましいのは
結論
青切符1~2回で他に問題がなければ特に専門家を頼らずに申請しても何とかなる可能性は高いと思われます。罰金刑がある、短期間に違反が集中している、永住申請を控えている場合は、申請取次行政書士への相談を推奨します。
自力対応も可能と思われるケース
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過去5年で青切符1~2回程度
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罰金刑・赤切符なし
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他の在留状況(収入・納税・届出)に問題なし
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反省文の書き方がイメージできる
→ 正直に申告+簡潔な反省文で対応可能
専門家への相談が望ましいケース
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罰金刑・赤切符がある
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過去1~2年で青切符が3回以上ある
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酒気帯び運転・無免許運転・ひき逃げ等の重大違反がある
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過去に入管から警告・在留期間短縮を受けたことがある
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永住申請を予定しており、違反歴の影響を正確に知りたい
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会社に知られたくないが、どこまで書くべきか判断できない
まとめ
交通違反は、就労ビザ更新において「即アウト」になるものとまでは言えませんが、回数・内容・申告の仕方次第でリスクが大きく変わります。
最も危険なのは「隠す」という選択です。入管はデータを照会することもでき、虚偽申告が発覚すれば違反そのものより重いペナルティを受けます。
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青切符でも正直に申告する(できれば反省文・理由書も付ける)
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罰金刑がある場合は反省文・理由書で誠実に説明する
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将来の永住を考えるなら、今から「違反ゼロ」を目指す
「バレなければ大丈夫」という発想は捨て、正直に申告したうえで、(基本的に)必要なら反省文で誠意を示す。これが最も安全で、長期的に見て最も賢明な戦略です。
違反歴があって不安な方、反省文の書き方が分からない方は、一度専門家に相談し、自分のケースがどのレベルなのか、どう対応すべきかの判断を仰ぐことをお勧めします。


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