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退去強制手続と出国命令制度について-Q&Aを題材に第二回-

退去強制手続と出国命令制度の改正は令和5年の入管法改正の最重要と言ってよいポイントです。今回は前回に引き続き出入国在留管理庁のホームページの「退去強制手続と出国命令制度Q&A」を題材に、改正後の退去強制手続と出国命令制度の解説をしていきたいと思います。


退去強制手続と出国命令制度

仮放免

Q26 仮放免の許可の基準はありますか。

A 入国者収容所長又は主任審査官は、健康上、人道上その他これらに準ずる理由によりその収容を一時的に解除することが相当であると認めるときは、仮放免をすることができるとされています(入管法第54条第2項)。
その上で、入管法では、収容しないで退去強制手続を進める措置である監理措置制度が整備されています。監理措置制度の創設に伴い、仮放免が許可されるのは、被収容者について、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により収容を一時的に解除することが相当と認められるときと整理されました。そのため、仮放免許可のためには、被収容者の収容を解除するための原則的な手段が監理措置であることを前提としてもなお、監理措置によることなく収容を一時的に解除することが相当と認められる程度の健康上、人道上その他これらに準ずる理由が認められる必要があります。

Q27 仮放免に付される条件にはどのようなものがありますか。

A 住居及び行動範囲の制限、呼出に対する出頭の義務のほか、就労の禁止など仮放免許可を受ける方の事情に応じた条件が付されます。

Q28 仮放免を許可されたときは、保証金を納める必要がありますか。

A 仮放免は、健康上、人道上その他これらに準ずる理由がある場合に限り、一時的に収容を解除する措置であることを踏まえ、仮放免の許可に際し、保証金を納付することを要しないこととされています。

Q29 仮放免中に指定された行動範囲外の場所へ出かける必要が生じた場合は、どうすればいいのですか。

A 仮放免許可書に記載された行動範囲外の場所へ出かける必要が生じた場合には、事前に、指定された住居を管轄する地方出入国在留管理官署の主任審査官に対し、行動範囲拡大の許可の申請を行ってください。
申請に当たっては、身元保証人と連名による行動範囲拡大の許可申請書のほかに、行動範囲を拡大する目的、必要性、期間等を明らかにした書類を提出しなければなりません。
なお、詳細については、指定された住居を管轄する地方出入国在留管理官署にご確認ください。

Q30 仮放免中に働くことができますか。

A 就労可能な在留資格を有していない場合には、仮放免中は働くことはできません。

出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度Q&A」より引用

今回の改正前の仮放免制度では収容されている外国人が健康上の理由など、比較的広範な理由で一時的に収容を解除されることが可能でしたが、改正後はこの適用がより厳格になったと考えられています。具体的には、「健康上、人道上その他これらに準ずる理由によりその収容を一時的に解除することを相当と認めるとき」という第54条第2項の内容から仮放免が許可されるのは主に健康上または人道上の理由に限られるようになり、これまでよりも条件が厳しくなっていると考えられます。

これは改正法で新たに導入された監理措置制度が収容しない場合の原則の制度とされたことによります。収容しない場合の仮放免はあくまでも健康上人道上の例外的な措置であるという位置づけとなったということでしょう。仮放免を許可された場合は仮放免許可証が交付され、常時携帯義務や入国警備官や警察官から提示を求められたときは提示する義務を負います。
また仮放免については期間の延長の申請も可能です。

ただし、仮放免された者が法第54条第2項の条件に違反して逃亡、又は正当な理由なく呼び出しに応じない場合は被仮放免者逃亡罪という刑事罰がかされることになります。

在留特別許可

Q31 在留特別許可とは何ですか。

A 在留特別許可は、退去強制事由(入管法第24条)のいずれかに該当し、本来、我が国から退去される外国人に対して、法務大臣が例外的・恩恵的に在留を許可する措置です。

在留特別許可をするかどうかについては、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に考慮した上で判断されます。

なお、退去強制令書を発付された外国人は、速やかに本邦から退去することが原則となるため、退去強制令書が発付された後の事情変更等は原則として考慮されません。

Q32 「在留特別許可に係るガイドライン」とは何ですか。

A 在留特別許可に係るガイドラインは、在留特別許可をするかどうかの判断に当たって、いかなる事情がどのように考慮され得るのかを例示したものです。

在留特別許可の判断基準を示したものではなく、例えば、ガイドラインに例示されている積極要素として考慮すべき事情があったとしても、それだけで在留特別許可をする方向で検討されるわけではありません。飽くまでもガイドラインに例示されている事情を含む諸般の事情を総合的に考慮した結果として、積極要素として考慮すべき事情が消極要素として考慮すべき事情を明らかに上回る場合に初めて、在留特別許可をする方向で検討されることになります。

Q33ー1 日本人と結婚していたり、日本で生まれたり幼少期から日本で生活している子どもがいれば、在留特別許可になるのですか。

A 退去強制事由のいずれかに該当する場合には、原則として退去強制されることとなります。日本人と結婚していることや家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性は、積極要素として考慮されますが、これらの事情があったとしても在留特別許可になるとは限りません。

これらの事情のほか、日本人との結婚に実態があるのかどうか、子どもを監護養育している実態があるのかどうかを含め諸般の事情を総合的に考慮した上で在留特別許可をするかどうかについて判断されます。

Q33-2 在留特別許可になるために、日本人と結婚していたり、日本で生まれたり幼少期から日本で生活している子どもがいるなどの事情が利用されることになりませんか。

A 退去強制事由のいずれかに該当する場合には、原則として退去強制されることとなり、在留特別許可は、飽くまでも例外的・恩恵的な措置にとどまります。

その上で、在留特別許可をするかどうかの判断に当たっては、他の不法滞在者に与える影響を含めた諸般の事情を総合的に考慮し、適正に運用しています。
    

Q34 在留特別許可の申請から許可まではどれくらいかかりますか。

A 在留特別許可は、本来退去強制されるべき人であっても、本人が我が国での在留を希望する場合に、諸般の事情を総合的に考慮した上で判断されるものです。

一つ一つのケースがそれぞれ異なっており、慎重に調査を必要とするものや、家族状況などを見極める必要のあるものなどもあり、結果が出るまでの期間について一概に申し上げることはできません。

出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度Q&A」より引用

在留特別許可は法務大臣が退去強制対象者に対して法50条1項各号の要件に該当するときに申請又は職権で在留を特別に許可する制度であり、これにより正規の在留資格を持たない外国人の在留が確定的に正規の在留となります。
前回不法残留時に出頭してもそれだけでは正規の在留とはならないというQ&Aを紹介しましたが、不法残留の外国人が帰国などをせずに正規の在留になるための方法が在留特別許可です。

今回の法改正でこの在留特別許可について例外的・恩恵的な制度という位置づけに対して人権保障の観点から批判も多いものの、法50条1項各号の要件の明確化やそれを受けたガイドラインの精緻化については評価する意見も多く見られます。

詳細はガイドラインを確認していただくとして、許可を考慮する要素としては在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由及び人道上の必要性などが挙げられており、それぞれについて、積極・消極に作用することになります。

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