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監理措置制度について-Q&Aを題材に第二回-

監理措置制度は令和5年の入管法改正によって導入され、退去強制手続において収容によらない場合の基本となるものです。今回は前回に引き続き出入国在留管理庁のホームページの「監理措置に関するQ&A」を題材に、改正後の監理措置制度の解説をしていきたいと思います。

監理措置制度

監理人


Q16監理人になるための要件はありますか。

A 監理人は、次の3つの要件を満たしていることが必要です(法第44条の3第1項又は法第52条の3第1項)。
・監理人の責務を理解していること(Q17参照)。
・監理措置決定を受けようとする外国人の監理人となることを承諾していること(Q22参照)。
・任務遂行の能力を考慮して、監理措置決定を受けようとする外国人の監理人として適当と認められること(Q23参照)。

Q17監理人の責務とはどのようなものですか。

A 「監理人の責務」は、次の4つです(法第44条の3第2項から第5項まで又は法第52条の3第2項から第5項まで)。
・被監理者の生活状況の把握、被監理者に対する指導・監督を行うこと(Q18参照)。
・被監理者からの相談に応じ、被監理者に対し援助を行うよう努めること(Q19参照)。
・届け出るべき事由が発生した場合には、主任審査官に届出を行うこと(Q20参照)。
・主任審査官から報告を求められたときは、報告を行うこと(Q21参照)。

Q18「被監理者の生活状況の把握、被監理者に対する指導・監督を行うこと」について、具体的にどのようなことをすればよいですか。

A 監理人は、被監理者が届出義務や監理措置条件等を遵守するために必要な範囲内で、被監理者の生活状況を把握したり、必要な指導・監督を行う必要があります(法第44条の3第2項又は法第52条の3第2項)。
 具体的にどのようなことをしなければならないかは、個々の被監理者の生活状況等に応じて様々なものが想定されますが、例えば、被監理者と定期的に連絡を取って、届出義務を履行しているか、監理措置条件を守っているかを確認することなどが考えられます。
 なお、監理人は、監理人になることを承諾した上で就任しているため、このような責務を当然果たしていただく必要がありますが、被監理者に届出義務や監理措置条件等を遵守させるために必要な範囲内で行っていただくものであり、常時、本人の生活状況を把握しなければならないなどの過度な負担を求めるものではありません。

Q19「被監理者からの相談に応じ、被監理者に対し、援助を行うよう努めること」について、具体的にどのようなことをすればよいですか。

A 監理人は、被監理者が届出義務や監理措置条件等を遵守することができるようにするため、被監理者から相談に応じ、被監理者に対して適切な援助を行うように努める必要があります(法第44条の3第3項又は法第52条の3第3項)。
 具体的な援助の内容は、個々の被監理者の生活状況等に応じて様々なものが想定されますが、例えば、被監理者が入管へ届出に行く際に付き添うことなどが考えられます。

Q20「届け出るべき事由が発生した場合には、主任審査官に届出を行うこと」とありますが、監理人は、具体的にどのようなことが起こったときに届出をしなければなりませんか。

A 監理人は、例えば、次に掲げる事由が発生したときは、届け出るべき事由が発生したときから7日以内に届け出なければなりません(法第44条の3第4項又は法第52条の3第4項・施行規則第36条の3第1項第4項)。
・被監理者が逃亡したことを知ったときや、逃亡するおそれがあることを知ったとき。
・被監理者が条件に違反したことを知ったとき。
・被監理者が法令に違反して不法就労活動を行ったことを知ったとき。
・被監理者が届出をしなかったことを知ったときや、虚偽の届出をしたことを知ったとき。
・被監理者が死亡したことを知ったとき。
・監理人の住所、連絡先等が変わったとき。
・被監理者と親族関係や雇用関係がある場合には、その関係が終了したとき。
 また、監理人は、これらのような届出事由が発生したことを知ったときには、例えば、次に掲げる事項を記載した監理人届出書を提出しなければなりません(届出は郵送でも可能です。)。
・届出に係る事実
・届出に係る事実が発生した日付
・届出に係る事実を知った経緯

Q21「主任審査官から報告を求められたときは、報告を行うこと」とありますが、主任審査官は、どのようなときに監理人に報告を求めますか。

A 主任審査官は、被監理者が届出義務や監理措置条件等を遵守しているか確認する必要が生じたときは、被監理者の生活状況や監理措置条件の遵守状況等の事項について、報告を求めることがあります(法第44条の3第5項又は法第52条の3第5項)。
 具体的にどのようなときに報告を求めるかは、個々の被監理者の生活状況等に応じて様々なものが想定されますが、例えば、被監理者からの届出内容の信憑性を吟味するために必要が生じたときや、被監理者に逃亡や不法就労活動の疑いがあるときなどが考えられます。

Q22監理人になろうとする人が、監理人になることを承諾していることを証明するにはどうすればよいですか。

A 監理措置決定を受けようとする外国人の監理人になることを承諾している場合には、「監理人承諾書兼誓約書」に必要な事項を記載してください。

Q23監理人としての任務遂行の能力が認められない場合はありますか。

A 監理人の任務遂行能力は、監理人になろうとする者の年齢、性格、職業、収入、容疑者等との関係性を総合的に勘案して判断されますが、例えば、次に掲げる者は、任務遂行の能力があるとは認められません。
・未成年者
・精神機能の障害により監理人としての任務を遂行するに当たっての必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
・在留資格を有していない外国人

Q24監理人の選定が取り消されることはありますか。

A 主任審査官は、次に該当する場合には、監理人の選定を取り消すことができることとされています(法第44条の3第6項又は法第52条の3第6項)。
・監理人が任務を遂行することが困難になったとき(Q25参照)。
・監理人にその任務を継続させることが相当でないと認められるとき(Q26参照)。

Q25「監理人が任務を遂行することが困難になったとき」とはどのような場合ですか。

A 例えば、疾病等により、監理人としての責務や義務を果たせなくなったときには、「監理人が任務を継続することが困難になったとき」と判断することがあります。

Q26「監理人にその任務を継続させることが相当でないと認められるとき」ときとはどのような場合ですか。

A 例えば、監理人が届出・報告義務に違反したときや、監理人が、被監理者に対して、不当に高額の報酬等を要求しているときは、「監理人にその任務を継続させることが相当でない」と判断することがあります。

Q27監理人を辞めることはできますか。

A 監理人を辞任する場合は、あらかじめ、主任審査官にその旨を届け出てください(法第44条の3第7項又は法第52条の3第7項)。
 また、監理人を辞任する場合には、辞任しようとする日の30日前までに、辞任する理由や、辞任する年月日などを被監理者の事務を担当している地方出入国在留管理官署に届け出るように努めてください(施行規則第36条の5第1項第2項)。

Q28監理人は被監理者等から報酬を受けることはできますか。

A 監理人に対する報酬について、特段の制限はなく、当事者の合意により報酬を受けることは可能です。
 ただし、例えば、監理人が被監理者に対して不当に高額の報酬等を要求をしていることが判明したときなどには、「監理人にその任務を継続させることが相当でない」と判断され、監理人の選定が取り消されることがあります。

Q29監理人は、監理措置決定通知書の謄本を常に携帯していなければいけませんか。

A 監理人に交付される監理措置決定通知書の謄本に、携帯義務はありません。

Q30監理人が監理人としての責務を果たさなかった場合には、どういった不利益を被りますか。

A 監理人の責務を果たさなかった場合には、「監理人にその任務を継続させることが相当でない」と判断され、監理人の選定が取り消されることがあります(Q24参照)。
 また、監理人が必要な届出をしなかったときや、虚偽の届出をしたとき、あるいは、必要な報告をしなかったときや、虚偽の報告をしたときには、処罰を受けることがあります(Q32参照)。

Q31被監理者が逃亡してしまった場合、監理人が処罰を受けることありますか。

A 監理人は、自己が監理する被監理者が逃亡したことをもって、処罰されることはありません。
 ただし、被監理者が逃亡した場合には、逃亡したことを知ったときから7日以内に、被監理者の事務を担当している地方出入国在留管理官署に届出を行わなければならず、その届出をしなかったときには、処罰を受けることがあります(Q32参照)。

Q32監理人が届出をしなかったときには、どのような処罰を受けることになりますか。

A 被監理者に関する届出や報告(Q20・Q25参照)をせず、又は虚偽の届出や報告をした監理人は、10万円以下の過料(行政罰)に処する旨規定されています(法第77条の2各号)。


出入国在留管理庁「監理措置に関するQ&A」より引用

今回の改正法で新たに導入された監理措置制度の中でこの監理人が最重要ともいえるポイントかもしれません。
監理人は被監理者の生活状況の把握及び指導・監督を行い、様々な主任審査官への報告義務を負います。
仮放免制度における身元保証人はあくまでも制度の運用上求められているにすぎず法令による責務や義務を負っていないのと大きく異なり、義務違反等には過料の罰則などがあります。

この監理人の報告義務などについて、支援者や弁護士が監理人となるのが難しいとして根強い批判があります。
「これまで仮放免の保証人として外国人支援を担ってきた支援団体や個人が入管の手先となることを強いられる」「支援者や弁護士が監理人となった場合、被監理者との間で利益相反の問題が生じる可能性がある」「過料の制裁を恐れながら入管当局に届出をしなければならず、被監理者との信頼関係が損なわれる恐れがある」といった意見があり、特に弁護士の守秘義務との関係が危惧され、結果として支援者や弁護士が監理人となる事が出来ないためかえって収容者、長期収容が増えていく…と危惧する方も多いようです。
出入国在留管理庁としては「同意を得て報告すれば守秘義務との問題は生じない」と考えているようです。

監理措置制度が目的とする長期収容の解消につながるかは実際の運用にかかってくると言えそうです。
被監理者の人権と尊厳を最大限に尊重する運用を行うために、監理人による過度の監視や干渉を避け、監理人を被監理者の支援者として位置づける運用を行い、またそうできるよう報告義務や罰則規定は柔軟に運用することが望ましいという意見があります。

報酬を受ける活動


Q33監理措置決定を受けている人は、働くことができますか。

A 在留資格がない外国人は、原則として、働くことが認められていません。
 ただし、退去強制令書の発付前であれば、被監理者の生計を維持するために必要であって、相当と認められるときは、被監理者の申請により、生計の維持に必要な範囲内で、就労先を指定するなど一定の厳格な要件の下で、例外的に報酬を受ける活動が認められることがあります(法第44条の5第1項)。
 なお、被監理者が、不法に就労したときは、処罰を受けることがあります(詳細はQ43、44を参照)。

Q34退去強制令書が発付される前の被監理者が報酬を受ける活動の申請をするためにはどうすればよいですか。

A 報酬を受ける活動の申請をするときは、被監理者の事務を担当している地方出入国在留管理官署に対して、報酬を受ける活動の許可申請書や必要な書類を提出する必要があります(施行規則第36条の7第1項)。
 また、報酬を受ける活動の申請は、報酬を受ける活動を行う本人がしなければなりません。

Q35報酬を受ける活動の申請をするときには、どのような書類が必要となりますか。

A 報酬を受ける活動の許可の申請をするときは、報酬を受ける活動の許可申請書に加えて、例えば、次に掲げる書類が必要です。
・労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書(雇用契約書や労働条件通知書等)
・就業予定機関の本店や事業所が日本にあることを疎明する資料(パンフレットや登記事項証明書等)
・就業予定機関の直近3月分の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の写し(領収日付印があるものに限る。)
・被監理者の収入や資産を疎明する資料(通帳の写しや住民税の課税・納税証明書等)
・被監理者と生計を一にする親族等の収入や資産を疎明する資料(通帳の写しや住民税の課税・納税証明書等)
・監理人等からの援助の有無や額を疎明する資料
・被監理者が住んでいる住居の賃貸借契約書の写し

Q36就労可能な在留資格を持っている被監理者が働こうとした場合にも、報酬を受ける活動の申請をしなければいけませんか。

A 就労可能な在留資格を持っている被監理者が、当該在留資格に応じた活動を行う場合には、報酬を受ける活動の許可の申請を行う必要はありません。

Q37報酬を受ける活動が許可された場合、どのような条件を守って働かなければいけませんか。

A 報酬を受ける活動が許可されたときは、次に掲げる条件が、監理措置決定通知書に記載されます。
・勤務先
・活動の内容
・報酬額の上限

Q38勤務先は指定されますか。

A 報酬を受ける活動の許可申請の際に提出された雇用契約書等に基づき、主任審査官が、勤務先となる本邦の公私の機関を指定します(法第44条の5第1項)。

Q39働ける職種に制限はありますか。

A 法律上、主任審査官は、本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う報酬を受ける活動として相当であるものを行うことを許可することができるとされています(法第44条の5第1項)。
 どのような活動が「報酬を受ける活動として相当である」かは、個別の事案ごとに判断されますが、例えば、次に掲げる事項に該当する場合には、「報酬を受ける活動として相当」でないと判断されます。
・従事しようとする活動が、法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる場合
・従事しようとする活動が、風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動である場合
・勤務先が、源泉徴収義務を適切に履行していると認められない場合

Q40報酬を受ける活動として、自分で会社を経営することはできますか。

A 報酬を受ける活動の許可の対象は、「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う報酬を受ける活動」であるため、被監理者が、収入を伴う事業を運営する活動を行うことはできません(法第44条の5第1項)。

Q41報酬額の上限はいくらですか。

A 報酬を受ける活動は、生計の維持に必要な範囲内で許可することができるとされています(法第44条の5第1項)。
 報酬額の上限は、生活保護における生活扶助及び住宅扶助の水準を参考にしつつ、被監理者や被監理者と生計を一にする者等の資産及び収入、監理人等の第三者による援助の見込み等を考慮して、個別の事案ごとに判断され、監理措置決定通知書に記載されます。

Q42退去強制令書が発付された後でも、報酬を受ける活動を行うことはできますか。

A 法令に違反し、法令に基づく手続の結果、退去強制が確定した外国人は、速やかに本邦から退去することが原則であり、退去強制令書が発付された被監理者は、働くことはできません。
 なお、被監理者が、不法に就労したときは、処罰を受けることがあります(詳細はQ43、44を参照)。

Q43在留資格がない退去強制令書発付前の被監理者が、報酬を受ける活動の許可を受けないで仕事をしたときには、どのような処罰を受けることになりますか。

A 退去強制令書発付前の被監理者で、報酬を受ける活動の許可を受けないで報酬を受ける活動を行ったもの又は収入を伴う事業を運営する活動を行ったもの(在留資格をもって在留する者を除く。)は、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する旨規定されています(法第70条第9号)。

Q44退去強制令書が発付された被監理者が、仕事をしたときには、どのような処罰を受けることになりますか。

A 退去強制令書発付後の被監理者で、収入を伴う事業を運営する活動を行ったもの又は報酬を受ける活動を行ったものは、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する旨規定されています(法第70条第10号)。

Q45退去強制令書が発付された被監理者は、報酬を受ける活動の許可を受けることができないとされていますが、被監理者の退去強制令書の発付の有無はどのように確認することができますか。

A 退去強制令書発付前の監理措置は入管法第44条の2の規定によるものであり、退去強制令書発付後の監理措置は第52条の2の規定によるものであるところ、被監理者に交付する監理措置決定通知書には、いずれの規定により監理措置に付したのか記載しています。また、就労が認められない退去強制令書発付後の監理措置決定通知書には、「就労の禁止」を条件として記載しています。
 そのため、被監理者に交付された監理措置決定通知書を確認することにより、当該被監理者に退去強制令書が発付されているか否かを確認することができます。


出入国在留管理庁「監理措置に関するQ&A」より引用

監理措置制度では退去強制令書の発付前後で監理措置の内容が異なることになります。退去強制令書の発付前の「収令監理措置」と発付後の「退令監理措置」です。退去強制令書の発付前の「収令監理措置」の場合のみ被監理者の生計を維持するために必要であって、相当と認められるときは被監理者の申請により、生計の維持に必要な範囲内で就労先を指定するなど一定の厳格な要件の下で、例外的に報酬を受ける活動が認められることがあります
この許可を受けずに報酬を受ける活動をした場合、刑事罰の対象となります。

この「報酬を受ける活動」は、主任審査官が指定する本邦の公私の機関との「雇用に関する契約」に基づいて行う報酬を受ける活動であることに注意が必要です。
「雇用に関する契約」に基づくものしか対象になりませんので、例えば個人事業を営んでいた外国人がその事業を行うことは許可の対象とはなりません。

なお、就労可能な在留資格を持つ被監理者がその在留資格により認められている就労活動を行う場合には、報酬を受ける活動の許可を申請する必要はないとされています。

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