近年デジタル化が進む日本の入国管理行政において、在留資格のオンライン申請システムは、外国人居住者の利便性を大きく向上させる重要な施策として注目を集めています。従来の対面での申請手続きと比べ、時間と労力の大幅な削減を実現し、24時間いつでも申請可能という利点があります。しかしシステムの利用にあたっては、各地域の入国管理局の管轄や対応可能な在留資格の種類など、重要な注意点も存在します。本記事では在留資格オンライン申請システムの基本的な概要から実際の申請手順、そして専門家に相談すべきケースまで、包括的に解説していきます。これから在留資格の申請を考えている方、外国人の採用を考えている企業、より効率的な手続き方法を探している方にとって、必要不可欠な情報をご提供します。
在留資格オンライン申請とは:効率的な新時代の申請システムへ
在留資格オンライン申請は、法務省が提供する電子申請システムを通じて、在留資格の取得や更新手続きをインターネット上で行えるサービスです。2019年の運用開始以降、対象となる在留資格や申請種類が徐々に拡大され、現在では多くの一般的な在留資格の手続きに対応しています。このシステムにより申請者は入国管理局への直接訪問が不要となり、自宅やオフィスから24時間365日いつでも申請が可能となりました。また申請状況のリアルタイムでの確認や、過去の申請内容の参照も容易になり、手続きの透明性が大きく向上しています。ただし、すべての在留資格がオンライン申請に対応しているわけではなく、また初回利用時には事前登録が必要となるなどいくつかの注意点があります。在留資格の基本概念
在留資格とは外国人が日本に滞在するために必要な法的地位を指します。在留資格(ビザ)には就労可能な資格(技術・人文知識・国際業務など)や、就労不可の資格(留学、家族滞在など)があります。これらの資格は外国人の日本での活動目的や滞在期間によって異なります。在留資格の種類 | 主な対象者 | オンライン申請対応 |
---|---|---|
就労資格 | 技術者、経営者など | ○ |
留学 | 学生 | ○ |
家族滞在 | 配偶者・扶養家族 | ○ |
オンライン申請の利点
在留資格のオンライン申請システムは、従来の対面式申請と比較して様々な利点を提供しています。最も顕著な利点は、申請者の時間的・物理的負担の大幅な軽減です。従来は入国管理局への往復時間や待ち時間を考慮する必要がありましたが、オンラインでは24時間いつでも申請が可能となり、仕事や学業への影響を最小限に抑えることができます。また、申請状況をリアルタイムで確認できる点も大きな特徴です。処理状況の透明性が確保され、必要に応じて追加書類の提出なども迅速に対応することが可能になりました。このシステムは、出入国在留管理庁の公式サイトで詳しく説明されています。
入管とは?その役割と機能
出入国在留管理庁入国管理局(通称:入管)は、日本における外国人の出入国および在留管理を担う行政機関です。2019年4月の組織改編により、これまでの入国管理局から格上げされ、より包括的な外国人施策の実施が可能となりました。入管の主要な役割には、在留資格の審査・発行だけでなく、外国人材の受け入れ促進や在留外国人の生活支援なども含まれています。各地方に設置された入国管理局の施設では地域の特性に応じた柔軟な対応を行い、外国人居住者と日本社会の橋渡し役として重要な機能を果たしています。入国管理局の基本情報
出入国在留管理庁は法務省の外局として設置され、全国8つの地方出入国在留管理局を中心に業務を展開しています。各地方局では、その地域特有の産業構造や外国人コミュニティの特性を考慮した対応を行っており、例えば留学生の多い地域では教育機関との連携を強化するなど、地域に即したきめ細かなサービスを提供していると言われています。入管が行う業務
入管の業務は多岐にわたりますが、中心となるのは在留資格に関する審査・発行業務です。これには在留期間の更新や在留資格の変更、永住許可申請なども含まれます。近年では、外国人材の受け入れ促進に向けた新しい在留資格(特定活動各号)や、在留管理制度の改善にも積極的に取り組んでいます。また外国人との共生社会の実現に向けて、生活支援や相談業務にも力を入れており、多言語での情報提供や相談窓口の設置なども行っています。在留資格オンライン申請に対応している入管
オンライン申請システムは全国の地方出入国在留管理局で利用可能ですが、後述するように管轄に注意が必要です。例えば京都の方がオンラインで申請した場合、申請先は京都出張所ではなく大阪入国管理局の本局となります(自動で振り分けられるので自分で指定する必要はありません)。そのため追加書類の提出先などについて迷ったりする場合もあります。事前に管轄する入管のウェブサイトなどで確認することをお勧めします。オンライン申請手続きの流れ
オンライン申請の手続きは、まず利用者情報登録から始まります。弁護士や申請取次行政書士といった専門家以外の個人で申請する場合は、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要となります。登録完了後は申請書類をスキャンなどして電子化し、その電子データをアップロードし、オンラインフォームへの必要な情報入力を行います。申請完了後は、システム上で審査状況を確認することができ、追加書類の要求があった場合もオンラインで対応可能です(郵送でも可)。許可が下りた場合は、在留カードの交付のみ郵送か入国管理局での受け取りが必要となります。最初の導入がかなり一般の方にはハードルが高いところだと思います。我々申請取次行政書士と違い、一般の方はICカードリーダーの準備などシステム導入に手間がかかります。また現在のところアップロードできる電子データの容量が10MBとかなり小さく、申請によっては圧縮しても添付しきれずに追加で郵送などする必要が生じます。この辺りの改善はぜひお願いしたいところです。
入管の管轄について知っておくべきこと
入管の管轄区域は申請者の居住地や所属機関の所在地によって明確に定められています。この管轄制度は各地域の特性に応じた効率的な行政サービスの提供を目的としています。例えば東京入国管理局では首都圏特有の多様な在留資格申請に対応するため、専門的な部署を設置し、迅速な処理体制を整えています。一方地方の入国管理局では、その地域の産業構造や外国人コミュニティの特徴を考慮した、よりきめ細かな対応を行っています。管轄区域とは何か?
管轄区域とは、各地方出入国在留管理局が担当する地理的範囲を指します。例えば- 東京出入国在留管理局:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県
- 名古屋出入国在留管理局:愛知県、三重県、岐阜県、静岡県、福井県、石川県、富山県
管轄区域は各地方入国管理局が責任を持って対応する地理的な範囲を指します。この区域は都道府県単位で設定されており、申請者は原則として自身の居住地を管轄する入国管理局で手続きを行う必要があります。ただしオンライン申請の場合、物理的な訪問は最小限に抑えられますが、追加書類の提出や申請の問い合わせなどのため管轄の概念は依然として重要です。これは各地域の実情に即した適切な審査と、効率的な行政サービスの提供を確保するためと言われています。
管轄による手続きの違いもある?
いわゆる東京や大阪の本局と言われる入国管理局と違い、大阪入管神戸支局などの支局、京都出張所などの出張所などでは本局と違いできることに限りがあります。オンライン申請で重要なのはオンライン申請時に管轄となる事ができるかです。先述の通り京都でオンラインで在留資格の申請を行っても京都出張所は管轄とならず、京都出張所に問い合わせても申請の回答は得られませんが、神戸での申請の管轄は大阪入管神戸支局となるのです(2024年11月現在)。
管轄する入国管理局によって必要書類や追加書類の指示に若干の違いが生じる場合があるとも言われています。以前はとある管轄の入管では必要と言われた書類が別の地域に引っ越して別の入管に申請したところ不要と言われた…などの話も聞かれましたが真偽は不明です(時間や状況の変化によりそもそも不要となった可能性もあります)。現在は手続きの取り扱いについて各入管の差異についてはあまり考えにくくはありますが、もしあった場合は指示通りに対処することを心がけておきましょう。
先述の通り管轄はオンラインで申請を行うと自動で振り分けられるので自身で指定する必要はない、というかできません。例えば神戸の場合通常の申請は神戸支局と大阪の本局ですが、大阪の本局に申請したいと思っていてもできません。
よくある質問(FAQ)
在留資格のオンライン申請に関して多くの申請者が共通して抱える疑問があります。特に多いのは申請後の進捗確認方法や、追加書類が必要となった場合の対応についてです。システム上での進捗確認は24時間可能であり、追加書類の要請があった場合もオンラインでの提出に対応しています。オンライン申請に関する疑問点
オンライン申請システムでは申請完了後も様々な不安や疑問が生じる可能性があります。そのような場合、まずは出入国在留管理庁の「オンラインでの申請手続に関するQ&A」ページを確認しましょう。また、特に複雑な案件や緊急を要する場合は在留申請オンラインシステムヘルプデスクに電話かメールで問い合わせることをお勧めします。在留申請オンラインシステムヘルプデスク
TEL : 050ー3786ー3053
Mail :mjf.support.cw@hitachi-systems.com
電話受付 : 月曜日から金曜日の9時00分から17時00分まで
(休日、12月29日から翌年1月3日までの日を除く)
メール受付 : 24時間365日受付
入管への訪問が必要なケースはある?
オンライン申請の場合基本的にはありません。在留カードの受取も郵送でも行うことができますので入管に行かないといけないわけではありません。ただし、申請によっては申請者本人やその代理人となった会社などに直接電話などで連絡がある場合があるのは通常の申請と変わりません。入管からあまり離れていない地域に住んでいる場合は在留カードはについては直接受け取ったほうが楽な場合もあるかもしれません。
専門家への相談を考える理由
在留資格の申請は一見するとそれほど複雑でない手続きに見えても実際には複雑な法的要件や手続き上の注意点が存在します。専門性の高いケースでは申請書類の準備から審査対応まで、専門家のサポートが大きな価値を持ちます。適切な専門家に相談することで申請の成功率を高め、スムーズな手続きを実現することができます。特に時間の節約のためにオンライン申請を検討している方の場合、自身でオンライン申請の環境を整えたり、実際に申請したりするのはかえって時間がかかる場合があります。オンライン申請の場合は対応している専門家に任せる方が望ましいでしょう。
複雑なケースへの対応力
在留資格の申請において特に慎重な対応が必要となるケースが増えています。例えば、複数の在留資格に該当する可能性がある場合や、特殊な職種での就労を伴う申請では、適切な在留資格の選択から必要書類の準備まで専門的な知識が求められます。こうした場合申請取次行政書士などの専門家のサポートを受けることで、申請の不備を防ぎ、スムーズな許可取得につながる可能性が高まります。またスタートアップビザなど、比較的新しい在留資格の申請では最新の制度理解と実務経験を持つ専門家の知見が特に重要となります。専門家への相談が望ましい主なケースは
・複数の在留資格の選択肢がある場合・特殊な職種や事業形態での申請
・過去に不許可となった経験がある場合
・急を要する申請で確実な対応が必要な時
・在留資格の変更を伴う転職時の申請
まとめと今後の展望
在留資格のオンライン申請システムは今後さらなる発展が期待される分野です。デジタル化の進展に伴い、より使いやすいインターフェースの導入なども検討されているようです。しかしシステムの利便性が向上しても、適切な在留資格の選択や複雑な要件の理解など、専門的な判断が必要な側面は残り続けるでしょう。そのため状況に応じて専門家のサポートを活用しながら、最適な申請方法を選択することが重要です。在留資格のオンライン申請は従来の対面での手続きと比べて大きな利便性をもたらします。しかしそれは単なる手続きの電子化ではなく、より効率的で透明性の高い在留管理システムへの転換を意味するといえるでしょう。申請者一人一人が自身のケースに最適な方法を選択し、必要に応じて専門家のサポートを活用することで、スムーズな在留手続きを実現することができます。
正直なところUIの改善はかなり望みたいところです。申請数をこなす我々専門家は使い方に慣れることができますが、おそらくには企業の担当者の方を含めて初めての方はかなり戸惑う部分があるのではないかと思われます。
オンライン申請に関する統計(2023年度)
・オンライン申請利用率:約35%(前年比+10ポイント)・平均処理期間:従来の窓口申請と比べ約30%短縮
・申請不備率:従来の紙申請の約半分以下
地域別の特徴
・東京都:83万人超(全体の27.5%)・愛知県:28万人超(全体の9.3%)
・大阪府:24万人超(全体の8.0%)
出典:出入国在留管理庁「在留外国人統計」2023年6月末現在
※オンライン申請に関する統計は2023年度第2四半期までの集計
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