まず最初に結論として配偶者ビザの初回申請(認定・変更)で落ちる典型は、「結婚している事実」ではなく「結婚の実体を、入管の質問書・提出書類の形式で立証できていない」ことだといえるでしょう。
残念ながら在留資格「日本人の配偶者等」は、単に婚姻届を出せばもらえるものではありません。入管法上の定義(身分)と実体(活動)が合致していることを、書面だけで証明する必要があるということなのです。
基準はどこにあるか(審査の4本柱)
結論:配偶者ビザの“具体基準”は、単独の「審査基準表」ではなく、以下の4点に分散して埋め込まれていると考えるのが正しいのではと思われます。
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在留資格の定義:「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」であること。
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提出書類一覧:これ自体が「入管が確認したい論点リスト」になっています。
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①身分関係(戸籍・海外の結婚証明)
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②生活基盤(住民税課税/納税証明等)
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③実体(交流資料)
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④審査の素材(質問書)
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質問書の設問設計:「審査のために答えていただく重要な参考資料」と明記され、ここでの回答矛盾が不許可の直接原因になります。
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COE審査基準:活動が虚偽でないこと(偽装結婚排除)が大前提となります。
認定・変更の作り方(3つの立証ポイント)
結論:初回申請は「(1)婚姻の成立」+「(2)婚姻の実体」+「(3)日本での生活継続性」の3点を、提出書類と質問書で“同じ結論”に収束させるのが正攻法といえます。
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婚姻の成立:戸籍謄本(全部事項証明書)や相手国の結婚証明書等の公的資料で立証します。片方の国だけで手続きしても不十分です。なぜかといえば日本での証明である戸籍謄本だけでは相手の本国で正式な婚姻が成立しているかははっきりしない(日本では成立していても海外で成立していないタイプの偽装婚も過去見られた)ため、日本と海外双方で正式な婚姻が成立していることを確認する必要があるのです。
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婚姻の実体:質問書で「知り合い〜交際〜結婚までのいきさつ」を年月日付きで詳細に説明し、スナップ写真・メール・SNS履歴などの交流資料で裏付けます。「別居」は原則NG(合理的な理由が必要)です。
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生活継続性:滞在費用を証明する資料として「直近1年分の住民税の課税(非課税)証明書・納税証明書」が基本です。
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※海外からの帰国直後で証明書が出ない場合は、預金通帳の写しや就職内定通知書、親族の援助申出書などで補完します。夫婦共に海外生活であった場合などは海外での納税証明書などを提出する場合もあります。
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質問書・添付書類の要点(ここが分水嶺)
結論:質問書は審査官から「突っ込まれやすい点」を先回りして記載させていくような設問構造なので、“短く曖昧に”書くほどリスクが上がるといえます。
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時系列の整合性:質問書は、出会いの時期・場所、結婚までの経緯、紹介者の有無まで問います。ここの日付や経緯が、パスポートの渡航歴やスナップ写真の日付と矛盾しているとかなり審査官に疑念を持たれる可能性が高まります。「出会いの具体的な場所や日時なんて覚えていない」という方もいますが、できる範囲で正確に記載する必要はあります。
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コミュニケーション能力:夫婦間の会話言語、互いの言語理解度を尋ねています。「言葉が通じないのにどうやって愛を育んだのか?」という疑念を持たれないよう、翻訳アプリの利用や学習状況などがあれば具体的に書く必要があります。
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交流資料の選び方:写真は「2人で写っているもの」だけではなく、親族との食事会や旅行など、周囲を巻き込んだ関係性が見えるものがベストです。なぜなら二人で写る写真は友人同士でも撮影は可能だからです。SNS記録は、日常の何気ない会話が継続していることを示すために提出します。
Q&A:よくある疑問と対策
Q1:写真が少ない(2人で撮っていない)場合、致命的ですか?
A:致命的とは限りませんが、代替資料での補強が重要です。
写真が少ないなら、メール履歴・SNSの通話履歴(毎日連絡している記録)や、渡航時の航空券の半券、パスポートのスタンプページなどで「会っていた事実」を間接的に証明します。「写真は苦手で撮らない」という説明だけでは弱すぎます。
Q2:言葉が通じない(通訳が必要)夫婦は不利ですか?
A:不利になり得ることは否定できません。意思疎通の方法を具体的に説明してください。
質問書には「通訳者」の記入欄まであります。翻訳アプリを使っているならそのスクリーンショット、お互いに勉強しているならテキストの写真などを添付し、「意思疎通に努力しており、婚姻生活に支障がない」ことを主張します。
Q3:日本側配偶者の収入が低い/課税証明が出せない場合は?
A:世帯単位での安定性を証明できれば許可の可能性があります。
本人が無職でも親と同居して援助を受けている場合や、預貯金が十分にある場合は、それを示す資料(親の課税証明書、身元保証書、預金通帳コピー)を追加提出します。入管が見ているのは「日本で生活保護にならずに暮らせるか」です。
Q4:質問書を適当に書くと何が起きますか?
A:不許可になるだけでなく、虚偽申告として処罰されるリスクがあります。
質問書には「虚偽の記載をした場合、法により処罰されることがあります」と明記されています。適当に書いた内容が事実と異なっていた場合、単なるミスではなく「虚偽」とみなされ、最悪の場合は在留資格取消しや刑事罰の対象になります。
まとめ:配偶者ビザ申請の基準を知る事
配偶者ビザ(認定・変更)の許可基準は、「提出書類一覧」と「質問書」に最も具体的に表れているといえます。
入管は、
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婚姻の成立(法的要件)
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婚姻の実体(偽装でないこと)
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生活継続性(経済基盤)
この3点を虚偽のない一貫した資料構成で確認しています。初回申請は“盛る”ほど危険です。入管が用意した設問(時系列・言語・紹介者・渡航歴・親族認知)に沿って、矛盾なく説明し、交流資料と家計資料で裏付ける。これが許可へのルートです。
在留資格「日本人の配偶者等」(外国人(申請人)の方が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合)認定証明書交付申請提出書類のチェックシートはこちら
変更許可申請提出書類のチェックシートはこちら
質問書(PDF : 387KB)


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