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【独自分析】法務省事例から読み解く「技人国ビザ」許可の具体的基準

就労ビザ

法務省が公表している「許可・不許可事例」は、単なる事例集ではなく、審査官が合否を判断する際の「採点基準」そのものと言っても過言ではありません。公開されている事例を「本国の大学卒業者」「日本の専門学校卒業者」「翻訳・通訳業務」のカテゴリーごとに分解すると、入管がどこを見て許可を出しているか、そのロジックが浮かび上がってきます。


「専攻との関連性」のハードルは意外と柔軟?(大学卒の場合)

事例分析から分かるのは、大卒者の場合、「専攻科目と業務の関連性」は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(PDF : 159KB)で示されているように、比較的柔軟に解釈されているという事実です。


  • 事例(7):本国大学卒 → 語学学校講師(許可)

  • 事例(11):経営学専攻 → 輸入販売会社での通訳・翻訳(許可)

  • 事例(12):経済学・国際関係学専攻 → 自動車メーカーでのマーケティング(許可)

【分析結果】
大学卒業者の場合、「学部名」と「職種」が直結していなくても、「大学で学んだ広範な知識(教養レベル含む)を活かせるか」という広い視点で審査されていると思われます。例えば、経営学部卒でも「語学力」や「商取引の基礎知識」があれば、通訳や貿易業務での許可が出ています。逆に、専門学校卒の場合は「専攻科目と業務の一致」が大学卒よりも厳格に求められるため、この「大卒アドバンテージ」を最大限利用することが許可への鍵といえるでしょう。


「通訳・翻訳」で許可を取るための隠れた条件といえるのは

多くの申請者がつまずく「通訳・翻訳」業務ですが、不許可事例から「NGなパターン」がある程度明確になっています。


  • 不許可事例(5)(専門学校卒事例より):飲食店で英語注文を取るだけ、メニュー翻訳のみ → 「業務量不足」で不許可

  • 不許可事例(6)(専門学校卒事例より):商品仕分けアルバイトへの指示を通訳 → 「現場労働の付随業務」とみなされ不許可

【分析結果】
許可される通訳・翻訳には、以下の3つの要素が実際には必要と思われます。


  1. 常時性(業務量):1日の業務の大半を通訳・翻訳が占めているか。「客が来た時だけ」はNG。

  2. 内容の高度性:単なる「いらっしゃいませ(Greetings)」や作業指示ではなく、契約交渉、会議、商談、クレーム対応など「言語的背景知識」が必要なレベルか。

  3. 場所の必然性:その現場に通訳が必要な客観的理由(インバウンド比率、海外取引の実績)があるか。そこではほとんど使用されない言語での通訳では満たす事は難しい

「実務研修(現場作業)」が認められるためのロジック

「最初は現場を知ってもらうために、店舗で販売や配膳をさせたい」という企業のニーズに対し、法務省は明確な許可基準(キャリアステッププラン)を示しています。


  • 許可事例(7)(留学生事例):採用当初2年間はスーパーでレジ・品出し等の研修 → その後、本社で幹部候補として勤務(キャリアプランあり) → 許可

  • 許可事例(14)(専門学校卒事例):コンビニ店長補佐として採用、1年後に店長昇格予定 → 許可

【分析結果】
現場作業(単純労働)が許可されるには、「期間限定(1~2年程度)」であることと、「その後のキャリアパス(店長、本社勤務など)」が具体的かつ確約されていることが条件といってよいでしょう。「いつか店長になってくれると思います」程度の曖昧な計画や、日本人大卒社員には課されない「外国人だけの研修」だと、それが必要な合理性が認められなければ不許可になる可能性が高くなると思われます。「日本人社員と同じ研修コースに乗っているか」も審査ポイントです。


報酬額の「日本人同等」はシビアに見られる

  • 不許可事例(3)(留学生事例):エンジニア業務で月給13.5万円申請 → 同時採用の日本人は月給18万円 → 不許可

【分析結果】
「外国人だから安く雇う」は即不許可と考えても良いでしょう。最低賃金を守るのは当然として、同じ会社に同じ職種・キャリア(新卒など)の日本人がいる場合、その給与額と比較されます。日本人がいない場合でも、地域の最低賃金はもちろん、同業種の平均賃金と比較して著しく低ければ不許可になる可能性が高くなります。


Q&A:事例から見る「よくある疑問」と回答

Q1:大学で「経済学」を専攻しましたが、IT企業のプログラマーとしてビザは取れますか?
A:許可の可能性があります(ただし条件あり)。
法務省の事例では、文系出身者でもIT企業でのシステムエンジニア等で許可が出ているケースがあります。ただし、大学での履修科目の中に「情報処理」「数学」「統計学」などの関連科目が含まれているか、あるいは入社後の充実した研修制度(OJT含む)を通じて技術を習得できる環境があることが前提となります。「文系だから即NG」ではありませんが、理系出身者よりも丁寧な「関連性の立証」が必要です。

Q2:コンビニや飲食店の店長候補として採用する場合、ビザは降りますか?
A:詳細なキャリアプランがあれば許可され得ます。
許可事例(14)のように、採用当初はレジ打ちや調理などの現場業務(単純労働)が含まれていても、「店長・管理者になるための実務研修」として期間(例:1~2年)が区切られ、その後確実に店舗管理や経営業務(技人国業務)に移行するキャリアプランがあれば許可の対象となる可能性は高くなります。重要なのはその計画が単なる口約束ではなく、書面(キャリアステッププラン)として提出できることです。

Q3:通訳として雇いたいですが、客が来ない時間は品出しを手伝ってもらってもいいですか?
A:メイン業務が通訳なら「付随業務」として認められる範囲があります。
原則として単純労働はNGですが、主たる業務が通訳・翻訳であり、業務全体の数割程度であれば、付随的な業務(品出し、清掃など)を行うことは許容される傾向にあります。しかし、不許可事例(6)のように、実態として「ほとんどが品出しで、たまに通訳」という状態だと、「主たる活動が単純労働」と判断され不許可になると思われます。「主従の関係」を崩さないことが鉄則です。


まとめ

法務省が公開している「許可・不許可事例」は、複雑な審査基準を読み解くための「答え合わせシート」と言えるでしょう。ここから導き出される許可の法則は実は結構シンプルと言えます。


  1. 「専門知識を使う業務」であることの実証(単なる労働力ではない)

  2. 「学歴・専攻」と「業務」の論理的な紐付け(大卒は広めに、専門卒は厳密に)

  3. 「日本人と同等」の待遇とキャリアパス(安価な労働力扱いはNG)

申請書類作成の際は、自分のケースに近い「許可事例」を探し、その事例で評価されたポイント(例:報酬額、キャリアプランの有無、業務内容の記述ぶり)を申請内容に盛り込むことで、許可率を確実に高めることができます。逆に「不許可事例」に当てはまる要素がないか、申請前に徹底的にチェックしましょう。


法務省出入国在留管理庁リンク集

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等についてPDF
本国の大学を卒業した者に係る許可事例
別紙1(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)(PDF : 86KB)
別紙2(ファッションデザイン教育機関)(PDF : 60KB)

この記事を書いた行政書士は
勝見 功一

はじめまして。京都市上京区でビザ申請手続きのお手伝いをさせていただいております申請取次行政書士の勝見です。
まだまだ若輩者ですが、持ち前のフットワークの良さを活かして迅速かつ誠実に対応させていただきます。初回の相談は無料ですのでまずはお気軽にお問い合わせ下さい。
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