在留資格(ビザ)の申請において、多くの方が最も知りたいのは「入管は何を見て許可・不許可を決めているのか」という現場での審査基準ではないでしょうか。しかし、多くの在留資格では具体的な審査基準が法令に明文化されておらず、「相当の理由」「適合性」といった抽象的な表現で運用されています。
そこで本ページでは法務省・出入国在留管理庁が公開している許可事例・不許可事例、ガイドライン、省令改正資料を詳細に分析し、「入管が実際に何を評価し、何を不許可要因としているか」を在留資格ごとに可視化しました。
他の解説サイトとの違い
| 一般的な解説サイト | 本データベース |
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| 「必要書類」「手続きの流れ」の説明 | 法務省の実際の事例から「何年の経験」「どの程度の関連性」が求められるかの情報を提供 |
| 「経験が必要」「関連性が必要」といった曖昧な表現が多くなる傾向 | 許可事例・不許可事例の対比により「分かれ目」を可能な限り明確化 |
| 法令の条文をそのまま引用が多くなる傾向 | 入管の審査ロジック(評価軸・判断基準)を理解しやすくなるように構造化 |
単なる「手続き代行」ではなく、「審査の実際を理解している専門家」として難易度の高い案件でも最適な立証戦略を設計できるような知見を提供します。
申請するビザを選んでご覧ください
永住許可(Permanent Residence)
こんな方向け: 長年日本に在住し、在留期限のない資格を取得したい方など(必要年数は在留資格によるので詳細は下記分析記事参照)
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主な審査ポイント:
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「10年在留」の本当の内訳(就労資格・居住資格で5年以上)
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公的義務の履行状況(年金・保険・税金の「納期限内」納付)
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最長在留期間(現行「3年」以上)の保有
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「我が国への貢献」特例のハードルの高さ
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➡ 【法務省資料の徹底分析】永住許可の「分水嶺」はどこにあるのか
特に重要な分析内容: 「納付済み」というだけでは不十分な理由、配偶者・高度人材の特例要件、法務省事例から見る「貢献」と認められるレベル(論文・表彰等)の現実。
就労系ビザ
技術・人文知識・国際業務(技人国)
こんな方向け: 日本にある企業への就職、転職、職種変更を予定している外国人
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主な審査ポイント:
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学歴・職歴と業務内容の関連性(法務省事例で「工学部→営業職」は不許可)
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実務経験年数の計算方法(10年要件のカウント基準)
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日本人と同等以上の報酬(賃金センサスとの比較)
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配置予定の具体性と合理性
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➡ 【独自分析】法務省事例から読み解く「技人国ビザ」許可の具体的基準
特に重要な分析内容: 法務省の許可事例・不許可事例を分析し、「関連性」の具体的判断基準(専攻×職務のマトリクス)、職務内容書の記載で避けておきたい表現やQ&Aも網羅。
経営・管理
こんな方向け: 日本で会社を経営している、または起業予定の外国人
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主な審査ポイント(2025年10月改正対応):
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資本金3,000万円への増資計画
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常勤職員1名以上の雇用継続
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経営実態性の立証(長期出国・事業所要件)
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公租公課の完全納付
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➡ 【2025年省令改正】経営・管理ビザ更新の新基準を徹底解説
特に重要な分析内容: 施行日から3年間の経過措置の正しい理解、更新申請における3段階の審査基準、経営実態「あり」「なし」の具体的判断事例、永住申請・高度専門職への影響。
身分系ビザ
日本人の配偶者等
こんな方向け: 日本人と結婚した外国人、または結婚予定の方
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主な審査ポイント:
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交際経緯の自然性(SNS・出会い系の場合の説明)
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結婚の信憑性(短期交際・年齢差・離婚歴への対応)
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収入要件(扶養能力または共働き計画)
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交際証明の質と量
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➡ 配偶者ビザ更新で落ちる理由を法務省資料から逆算
特に重要な分析内容: 法務省の許可事例・不許可事例を完全分析、「偽装結婚」と疑われるパターンと回避策、交際期間・年齢差・離婚歴の「許容ライン」。
定住者(離婚・死別/監護・養育)
こんな方向け: 日本人・永住者と離婚または死別した外国人、日本人実子を養育している方
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主な審査ポイント:
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日本人実子との関係性(親権・監護養育実績)
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婚姻の実体性(婚姻期間・同居期間・離婚理由)
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自活能力(就労収入・生活保護の有無)
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日本での生活実体(長期出国の有無)
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➡ 【独自分析】法務省事例から読み解く「離婚・死別定住/監護・養育定住」許可の具体的基準
特に重要な分析内容: 告示外定住の「見えにくい基準」を可視化。親権がない場合でも許可される条件(養育費・面会交流)、婚姻期間の「短さ」を補うDV立証の方法。
全ビザ共通の審査基準(更新・永住への影響)
どの在留資格でも、以下の要素は横断的に審査されます。個別の在留資格要件を満たしていても、これらの要素で問題があれば不許可となる可能性があります。
1. 素行善良要件
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不許可リスクが高いケース: 懲役・禁錮刑の前科(執行猶予含む)、罰金刑(特に薬物・暴力・性犯罪)、複数回の交通違反。
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対応策: 軽微な違反は正直に申告し反省を示す。重大な犯罪歴がある場合、執行猶予満了後一定期間(5年〜10年)経過してから申請など具体的な方策をケースごとに検討する。
2. 公租公課納付要件
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不許可リスクが高いケース: 納税義務があるのに未申告、納付期限を過ぎた滞納(特に1年以上)、年金未納期間が長い。
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対応策: 滞納がある場合は申請前に完納する。分納中の場合は計画書と実績を提出。
3. 届出義務の履行状況(法改正により厳格化)
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不許可リスクが高いケース: 配偶者との離婚・死別後14日以内の届出をしていない、転職時の所属機関変更届を出していない、住居地変更届の遅延。
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対応策: 過去の届出漏れがある場合は、理由書を添えて速やかに提出し、反省文などを添付する。
法務省資料の読み方と活用法
公開されている主な資料
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許可・不許可事例集: 「技人国」「日本人の配偶者等」「定住者への変更」などで定期的に公表されています。
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ガイドライン: 「永住許可」「在留特別許可」などで審査の方向性が示されています。
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Q&A・FAQ: 制度改正時(2025年経営・管理改正など)に詳細な運用ルールが出されます。
事例の読み解き方
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「特記事項」に注目: 入管が何をプラス評価(許可理由)としたか、またはマイナス評価(不許可理由)としたかの核心部分といえます。
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共通項を探す: 複数の事例で共通して挙げられている要素は、「重要要件」である可能性が高いといえるでしょう。
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分水嶺を見極める: 許可事例と不許可事例で、条件が似ているのに結論が異なるケース(例:年収額、交際期間の差など)が、審査のボーダーラインとなると思われるので特に注目すると良いでしょう。
こんな時は専門家にご相談ください
本記事で基準を確認した結果、ご自身のケースに不安がある場合は、申請取次行政書士などの専門家への相談を推奨します。
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就労ビザ: 学歴と職歴の関連性が薄い、転職で職種が変わる、不許可歴がある。
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身分ビザ: 交際期間が短い、アプリやSNSでの出会い、離婚歴が多い。
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経営ビザ: 2025年改正後の更新が不安、赤字決算が続いている、永住を目指したい。
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共通: 過去に犯罪歴やオーバーステイがある、税金の未納がある。


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