2026年現在、外国人材受け入れ政策は大きな転換点を迎えつつあるようです。
2027年4月施行予定の「育成就労制度」や「特定技能」の拡大に向けた準備が進む中、政府内では「在留資格の適正化」という名の厳格化を求める声が強まっています。
ターゲットとされている一つが、専門的・技術的分野とされる「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」です。
これまでは「大学を出ていれば、多少関連性が緩やかで、ある程度の現場業務が入っていても許可される可能性がある」というグレーゾーンともいえる部分が存在しましたが、現政権下での厳格化方針により、今後はその「緩やかさ」が許されなくなる可能性が高まっています。
本記事では最新の政策動向と法務省の実態調査の動きから、今後更新不許可のリスクが高まる具体的な業務パターンと、企業・申請人が今すぐ確認すべきポイントを解説します。
政策動向から読み解く「厳格化」の3つの背景
①現政権などの方針:「高度人材」と「労働力」の明確な峻別
自民党外国人政策本部の提言(2026年1月20日)では、「不法出入国・不法滞在への対策強化」が柱として掲げられました。
これは、「高度人材(技人国)」というべき在留資格で入国しながら、実際には単純労働に従事しているようなケースを「在留資格該当性の欠如」として、より厳格に審査しようとする動きです。
技人国ビザ保持者は2024年末時点で約41万人と過去最多を記録し、前年比5万6千人増加しています。この急増に伴い、適正な運用を求める声が政府内で高まっています。
②「育成就労制度」や「特定技能」との棲み分け
単純労働分野をカバーする「育成就労」(2027年4月施行予定)や「特定技能」制度が整備されることで、入管側には「現場仕事なら特定技能へ移行しなさい」とより言える法的環境が整います。
これまで「他に適切なビザがないから」存在していたようにも思われるグレーゾーン業務に対する風当たりが強くなるのは必然とも考えられます。
技人国と特定技能の主な違い
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 対象業務 | 大学等で学んだ知識を要する専門業務 | 特定産業分野の相当程度の技能を要する業務 |
| 学歴要件 | 大学卒業または10年以上の実務経験 | 不要(技能試験合格が必要) |
| 現場作業 | 原則不可(付随的のみ可) | 可能 |
| 家族帯同 | 可能 | 不可 |
| 在留期間 | 最長5年(更新可) | 通算5年まで |
③出入国在留管理庁による「派遣実態調査」の開始
2025年8月16日、出入国在留管理庁は技人国ビザを持つ派遣社員の「派遣先での業務実態」に関する調査を開始することを発表しました。
約41万人の技人国保持者のうち、約4万人(約1割)が派遣労働者と推計されており、「エンジニアとして採用されたが、派遣先では家電量販店の携帯販売員だった」といったケースの実態把握が進められています。
今後は審査の目が「書類上の契約」から「現場の実態」へとシフトしていくことが予測されています。
今後審査で精査される可能性が高いと思われる「グレーゾーン業務」の類型
以下の業務などに従事している方は、次回の更新審査で「業務内容の不一致」を指摘されるリスクが高まる可能性を指摘する声があります。
ケース1:小売・飲食店の「店舗管理者」として勤務
現状: 「店舗管理・経営企画」という名目で許可されているケースが多い。
リスク: 実際には週5日のシフトに入り、レジ打ちや品出し(現場作業)が業務のかなりの割合を占めている場合、「それは特定技能の対象業務です」と判断され、在留資格該当性を欠くとして不許可になる可能性があるかもしれません。
判断のポイント: 店舗運営の企画・分析・マネジメント業務が主たる活動(少なくとも全体の5割以上)であることが求められます。
ケース2:文系出身の「ITエンジニア(未経験)」として勤務
現状: 文系学部卒でも、IT企業に就職すれば「技術」区分で許可が出ていた。
リスク: テスター(検証)やキッティング(PC設定)などの下流工程のみを長期間続けている場合、「学術的素養(大学での学び)を活かしていない」として、更新が認められないケースが出てくると予測されます。
判断のポイント: 入社後のスキルアップと業務の高度化(設計・開発への関与)が実績として示せるかどうかが重要です。
ケース3:製造・宿泊施設の「現場管理者・通訳」として勤務
現状: 「通訳・翻訳」「現場管理」として許可されている。
リスク: 通訳の必要性がない時間帯に、ライン作業やベッドメイクを常態的に行っている場合、単純労働とみなされるケースも多くなると思われます。
判断のポイント: 通訳・翻訳業務や管理業務が明確に業務時間の主要部分を占めており、現場作業は「付随的」であることを証明する必要があります。
「不許可」を回避するために今やるべき3つの対策
対策①:業務内容の精査・見直しと「専門性」の再定義
申請書に書く業務内容(予定)と、日々の業務日報(実態)を見比べてください。
「現場作業」と「専門業務(管理、企画、通訳等)」の比率を明確にし、専門業務が主たる活動(少なくとも全体の5割以上)であることを実績として残す必要があります。
具体的な記録方法:
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業務日報に「専門業務」と「付随業務」を分けて記載
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企画書、提案書、翻訳成果物など専門性を示す証拠の保管
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社内研修やスキルアップの記録
対策②:雇用契約書・理由書の書き直し
次回の更新時には、以前と同じ理由書を使い回すのは危険です。
「入社3年目で、どのような専門的スキルを身につけ、どのような高度な業務を任されているか」を具体的にアップデートし、「単なる労働力ではない」ことをアピールする書類作成が必須になります。
理由書に含めるべき要素:
-
入社時から現在までのスキル向上の経緯
-
担当業務の高度化・専門化の具体例
-
大学等で学んだ知識との関連性
-
今後のキャリアパスと業務展開
対策③:「特定技能」への変更も視野に入れる
もし現在の業務がどうしても「現場作業中心」にならざるを得ないなら、無理に技人国に固執せず、合法的に現場作業ができる「特定技能」への在留資格変更を検討するのも賢明な判断です。
「不許可(オーバーステイのリスク)」になるより、安定した在留資格へ移行する方が、将来の永住申請にとってもプラスに働きます。虚偽申請を行わないのは当然ですが。
対策④:日本の大学卒業者は「特定活動46号」も検討を
日本の大学または大学院を卒業(一部専門学校も含む)し日本語能力試験N1相当の方に限り、もう一つの選択肢があります。 それが「特定活動(本邦大学卒業者)」、通称「特定活動46号」です。 この在留資格は、技人国では認められない現場業務(接客、販売、製造ラインの一部等)であっても、「日本語を用いた業務」であれば許可される可能性があります。46号が有効なケース例:
– コンビニ・飲食店の店舗管理者(現場作業が中心でも可)
– ホテルのフロント業務(接客が主でも可)
– 小売店の販売員兼商品企画 – 製造業の現場監督(外国人労働者への指示・通訳含む)
ただし、要件が厳格(日本の大学卒・日本語N1・フルタイム雇用等)であり、すべての技人国保持者が対象ではありません。 詳細は別記事で飲食店勤務を題材に解説していますので、該当する方はご確認ください。
→ 技術人文知識国際業務ビザ|飲食店での許可条件と特定活動46号
法務省公式の判断基準を確認する
出入国在留管理庁が公表している「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」では、具体的な許可事例・不許可事例が示されています。
特に2024年12月25日に更新された別紙3(事例集)は、現在の審査基準を知る上で重要な資料です。
この公式文書では以下のポイントが明確化されています:
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「自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識」の具体的範囲
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「単純労働」と「専門業務」の境界線の考え方
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業務内容の「付随性」の判断基準
更新申請前には必ずこの公式資料を確認し、自社・自身の業務が基準に合致しているか検証することを強く推奨します。
事例集に関する解説記事は【独自分析】法務省事例から読み解く「技人国ビザ」許可の具体的基準まとめ:制度の趣旨に立ち返る時期が来た
2026年の政策トレンドは、「外国人ルールの適正化(厳格化)」です。
本来の「技術・人文知識・国際業務」の趣旨(大学等で学んだ知識を活かす業務)に合致していれば、基本的には恐れることはないといえます。
しかし、もし現在の働き方に「後ろめたい部分(現場作業ばかりしている等)」があるなら、今のうちに是正するか、適切なビザへ変更する準備を始めてください。
政権の方針が変わったといえる今、「前回大丈夫だったから今回も大丈夫」という経験則は、最も危険な罠となりえるのです。
2027年4月の育成就労制度施行を前に、今こそ在留資格の適正化を進める絶好の機会ととらえてください。


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