最初に結論として、「通訳もしているのにアパレル販売の就労ビザ(技人国)が降りない」最大の原因は、入管が“通訳”ではなく“販売(特段の専門性を要しない業務)”が主たる活動だと判断する点にあると思われます。
技人国ビザは、契約に基づき「自然科学・人文科学の知識を要する業務」または「外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務」に従事する活動でなければならず、単に“外国語が話せるから接客で助かる”というレベルでは専門性があるとはいえず許可されないと考えるべきです。
降りない典型原因(不許可の壁)
結論:不許可(または難色)の典型は、「業務の大半が販売・レジ・品出し等に見える」「接客がメインで通訳が“補助的”に見える」「通訳の業務量・必要性が立証されていない」の3点です。
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活動の全体評価:入管は“在留期間中の活動を全体として捉えて判断する”としています。技人国に該当する業務(通訳等)が一部あっても、残りの大半が「特段の知識を要しない業務(レジ、品出し、単純接客)」であれば、技人国には該当しないと判断されていると思われます。
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業務量の不足:翻訳・通訳で申請する場合、「何語と何語間の通訳か」「実際に通訳が恒常的に発生する業務量があるか(単発・偶発的ではないか)」について厳しく見られます。「外国人客が来た時だけ対応する」では主たる活動とは認められませんし、また客層的にその言語の通訳が必要かどうかも判断されます。
許可へ寄せる職務設計
結論:許可に寄せるには、職務を「通訳・翻訳/海外対応/海外取引・広報宣伝等(国際業務)」側に“主業務として再設計”し、販売は「付随」「研修」として位置づけ、全資料の整合性を取ります。
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主従関係の明確化:職務記述書・雇用理由書・組織図・業務フロー・週次業務割合において、全てが「通訳・国際業務がメイン」という結論を指すように設計します。
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例:単なる接客ではなく、「免税手続きの専任」「海外顧客向けのSNS発信・マーケティング」「海外店舗との連絡調整」「外国人VIP顧客のアテンド」など、高度な業務を中心として組み込む。
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研修としての位置づけ:「一時的に技人国に該当しない業務が含まれても、研修として必要で、日本人にも同様に行われ、活動全体として大半を占めない」場合は許容され得ます。ただし、期間(数ヶ月〜1年程度)とゴール(研修後の配属先)が明確な研修計画書作成が重要です。
代替ルート(特定活動46号)の検討
結論:日本の大学卒等で要件に合う場合は、販売要素を一定含む就労が現実的になり得るため、「特定活動(本邦大学等卒業者)」(いわゆる46号)を検討対象に入れることが考えられます。
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46号のメリット:技人国では難しい「現場での接客・販売」を含む業務が広く認められます。また、大学等での専攻と業務の関連性も要件ではありません。
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必須要件:
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日本の大学(または大学院)等を卒業し、学位を授与されていること。(※専門学校卒、海外大学卒は基本的には対象外。ただし一部の専門学校は例外的に認められる。詳しくは後述)
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高い日本語能力(JLPT N1合格 または BJTビジネス日本語能力テスト480点以上)。
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注意点:46号も「どんな仕事でも無制限」ではありません。「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」であることが前提であり、常勤職員としての雇用が必要です。
よくある質問(Q&A)
Q1:求人票に「通訳・販売」と書けば通りますか?
A:通りやすくはなりません。
審査は“実態”で判断されます。求人票の記載にかかわらず、実態として「販売(単純作業)」の比率が高ければ不許可になります。業務量と必要性の客観的な裏付け(店舗の外国人客数データ、免税売上比率など)が重要です。
Q2:店舗で外国人客が多ければ「通訳」で通りやすいですか?
A:有利にはなりますが、「客が多い」だけでは不十分です。
「いつ来るかわからない客を待っている時間」は通訳業務ではありません。「恒常的に」業務が発生していることを示すため、翻訳業務や海外向け発信など、客がいない時間帯の専門業務を明確にする必要があります。また客層も重要で、英語や中国語と異なる少数の客しか対象とならない言語の場合、必要性の証明はより困難になります。
Q3:最初は販売中心で、将来は本部業務の予定でも申請できますか?
A:可能性はありますが、キャリアステップと研修の合理性が厳しく見られます。
「将来は本部」と言いつつ、何年も店舗に塩漬けにするケースも多く見られるため、入管も警戒しています。具体的なキャリアプラン、研修計画書、過去の外国人社員の実績などで、「計画的な研修であること」を強く立証することが重要となるでしょう。
Q4:46号(特定活動)なら専門学校卒でも許可されますか?
A:基本的には対象とならないですが、「高度専門士」なら使える場合があります。
特定活動46号は、原則として「日本の大学・大学院卒業者」が対象です。一般的な2年制専門学校卒業者(専門士)は対象外です。
ただし、以下の条件を全て満たす場合に限り、専門学校卒業者も対象となります。
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高度専門士の称号を付与されていること(4年制課程など)。
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卒業した学科が、文部科学大臣が認定した「認定専修学校専門課程(外国人留学生キャリア形成促進プログラム)」であること。
アパレル関係の多くの留学生が通う2年制専門学校は対象外のケースが大半ですので、ご自身の称号と学校が認定校かどうかを必ず確認してください。
まとめ
「アパレル販売+通訳」でビザが降りない案件は、“通訳が主で販売が従”という立証が崩れていることが原因になりやすいと思われます。
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技人国で行くなら:活動全体として専門業務が主であることを、契約書類・職務記述・データで徹底的に立証する。販売はあくまで「研修」か「付随」に留める。
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46号で行くなら:日本の大学卒+N1等の要件を満たすか確認し、満たすならこちらの方が現場業務を含めやすく許可のハードルが下がる。
最初から「どの在留資格の枠で、どの資料で勝ち筋を作るか」を決めてから申請設計に入ることが、不許可リスクを下げる効果的な方法です。
法務省出入国在留管理庁リンク集
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等についてPDF
本国の大学を卒業した者に係る許可事例
別紙1(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)(PDF : 86KB)
別紙2(ファッションデザイン教育機関)(PDF : 60KB)


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