経営管理ビザの要件が緩和され、これまで以上に多くの外国人起業家が日本でビジネスを展開するチャンスが広がっていくと予想されています。しかし本当にそうなるのでしょうか。ここでは、その詳細と今後の展望について解説します。
経営管理ビザの要件緩和
経営管理ビザの申請において高いハードルとなるのが- 500万円の出資金又は日本に居住する常勤職員を雇用するなどの事業規模
- 独立した事務所が必要
500万円の資金を調達するのはもちろん容易ではありませんし、新会社の事業所のための不動産を見つけるのも外国人にとってなかなか難しく、日本在住の協力者がいないと厳しいものがあります。
そんな中、2023年10月に外国人が起業しやすい環境を整え、経済の活性化につなげる狙いということである報道がありました。
500万円の出資と事務所の確保が不要になる?
2024年度中に省令改正、緩和実現?
報道によると、日本政府は外国人起業家の日本進出を促進するために経営管理の在留資格(ビザ)取得要件を大幅に緩和し、事業所や出資金がなくても事業計画書で日本に最大2年間滞在できるようにする方向であるとのことです。出入国在留管理庁はこれを実現するため2024年中に在留資格に関する省令の改正を実施、それ以降は事務所や出資などの要件に達しなくても、事業計画書等の内容などから最大2年間滞在できるようになる…とのことです。
※2024年3月に経営管理ビザのガイドラインが改訂され、資本金の基準として有償型の新株予約権の払込金を計上することが認められるようになりましたが、ここではその説明は省きます。
(おそらくあまり関係する人は出なさそうなので今後も説明しないかもしれません)
緩和後は経営管理ビザが簡単に取れるようになる?
現状就労ビザの中でも経営管理ビザの取得は最難関であると言えます。それが緩和されることに強い期待を持っている方も多いでしょう。
ただ、上記緩和がなされたとしても経営管理ビザの取得が大幅に楽になり、簡単に取れるようになるという見方はおそらくには少数派ではないかと思われます。
経営管理ビザの厳しい要件は不法就労や目的外の利用、例えば就職できなかった留学生がとりあえず起業したことにする、あるいは現状外国人の親を日本に呼ぶ在留資格(ビザ)はないに等しいものがありますが、その代わりとして取得する…といったことを防ぐためにあり、500万円の出資と事務所の確保、特に500万円の出資はそのためにある要件の一つと言えたからです。
事業所要件については以前から現代の要件にそぐわない(事務所をわざわざ持つ必要性がない)のではないかという意見が強かったようです。
そのため緩和が行われたとしても、ある程度それに代わるような審査材料…例えば出資がない場合は事業計画書や申請者自身の経歴がより厳しく問われるなどのことは考えられるでしょう。資金がある方にとってはこれまで通りの出資を行う方が申請がしやすい場合もありえるかもしれません。
外国人創業活動促進事業と外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)
「スタートアップビザ」は、2015年7月から開始された内閣府国家戦略特別区域「外国人創業活動促進事業」及び経済産業省により2018年12月から施行された「外国人起業活動促進事業」の二つの外国人の起業を促進するための施策です。ここでは詳しくは述べませんが、簡単に言うと基本的には起業したい外国人の事業計画などを指定された認定自治体などで審査して、審査を通過したら起業準備の在留資格(ビザ)を取得することが可能となる(もちろん入管の審査もありますが)というものです(かなり情報が多いので別の機会に詳しく説明します)。
このスタートアップビザにおいては通常の経営管理ビザ取得よりもいろいろ要件が緩和されている部分があるのですが、これまで指定された自治体のみでしか利用できなかったものが日経新聞のこの記事によると全国で利用できるようになる…とのことです。
ただ、このことをとらえて経営管理ビザ自体が要件緩和されたとは現時点(2025年1月)では考えにくいと思われます。
実際に経営管理ビザそのものについて省令改正等が行われたのならまたここで説明していきますが、具体的な改正状況とその運用をみるまで慎重に検討することが重要です。
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