日本で長く暮らしたいと願う外国人配偶者にとって、「永住権」取得は大きな目標です。しかし、申請から取得までにはどれくらいの期間がかかるのか、どのような手続きが必要なのか不安を感じている方も多いのではないでしょうか?本記事では、配偶者ビザから永住権を取得するまでの流れを審査期間や必要書類、注意点を含めてわかりやすく解説します。
永住権とは?メリットと取得条件
「永住権」とは、日本に永住する資格のことです。一度取得すれば、更新手続きなどをすることなく、日本に住み続けることができます。多くのビザに見られるような就労活動の制限もなく、日本人とほぼ同様の権利が認められます。永住権を取得するメリット
永住権を取得することで、以下のようなメリットがあります。就労制限の撤廃: アルバイトや起業など、あらゆる職業に就くことが可能になります。配偶者ビザの場合就労制限はありませんが、他の多くのビザには就労可能な活動に制限があります。永住権を取得することで、これらの制限がなくなり、自由に仕事を選ぶことができるようになります。
ローンが組やすくなる: 住宅ローンや自動車ローンなどが、日本人とほぼ同じ条件で利用できるようになります。永住権は、金融機関にとって、長期的な安定居住を示すものとなるためです。
公務員試験の受験資格: 一部の職種を除き、公務員試験を受験することができるようになります。日本国籍を必要とする一部の職種を除いて、永住権を持つことで公務員として働く道も開けます。
選挙権以外の権利はほぼ日本人と同等: 日本でより安定した生活を送ることが可能になります。永住権を取得することで、日本社会の一員として、より安定した生活基盤を築くことができます。
永住者となっても一部の公務員にはなる事はできませんが、他の在留資格ではなれない公務員も存在するためかなり公務員となる選択肢は広がると言えるでしょう。また、今回は配偶者ビザからの永住権取得であるためあまり関係ありませんが、永住者となった後は配偶者や子の在留資格についても有利になります。
配偶者ビザからの永住権取得条件
配偶者ビザから永住権を取得するには、以下の条件を満たしている必要があります。これらの条件は、法務省 入国管理局のウェブサイト「永住許可」の配偶者ビザからの申請のページで確認できます。- 婚姻期間(配偶者との同居期間): 原則として3年以上の婚姻期間(海外在住であった場合には、日本に居住する期間が1年以上で認められる場合もある)
- 素行要件: 日本で犯罪や違法行為がないこと。納税や交通ルール遵守など、日本社会のルールを守って生活していることが求められます。
- 生計要件: 自立して生活できるだけの収入または資産があること(安定した収入、預貯金残高、納税状況などが考慮される)
- 日本の利益に適合する: 日本の公の秩序や安全を害するおそれがないこと。テロ行為や反社会的な活動に関与していないことなどが求められます。
婚姻は法的な婚姻かつ実態を伴うもの、つまり真正な婚姻である必要があります。法的な婚姻であっても婚姻の実態のないものは認められません。
配偶者ビザの種類と永住権申請資格
配偶者ビザの種類と特徴
配偶者ビザは、「日本人または永住者と結婚していること」を理由に認められる在留資格です。就労活動に制限がない点が大きなメリットです。在留期間は、6月、1年、3年、5年のいずれかが認められます。基本的には最初に1年の期間が与えられ、1回目の更新はまた1年、2回目の更新で3年と言うパターンが多いといえます。6月は離婚調停中など婚姻の継続自体が危ぶまれるようなかなり例外的な場合であり、5年についてはかなり見ることが珍しいと言えます。
永住権申請に必要な在留期間
原則として、実体を伴った婚姻生活が3年以上かつ引き続き1年以上日本に在留していることが必要となります。「引き続き1年以上日本に在留」という要件に引っかかる方も結構います。どういう事かと言うと、日本と本国などを頻繁に往来していて、ほぼ半々くらいに生活している場合などです。これでは「引き続き1年以上日本に在留」とは言えないと判断される可能性が高いです。
その他の在留資格からの申請
「技術・人文知識・国際業務」など、他の在留資格からの永住権申請も可能です。それぞれの在留資格によって、必要な在留期間や条件が異なるため注意が必要です。永住権申請に必要な書類
永住権の申請には多数の書類が必要となります。申請前に、法務省のウェブサイト「永住許可申請に必要な書類チェックシート」で最新の情報を確認しましょう。基本書類と補足書類に分けて解説します。基本書類
- 永住許可申請書:申請者の情報や、永住を希望する理由などを記入します。
- 写真(縦4cm×横3cm):申請前3ヶ月以内に撮影した無帽、正面、無背景のもの
- パスポート及び在留カードのコピー:有効期限内のもの
- 住民票(世帯全員が記載されているもの):申請日から3ヶ月以内に取得したもの
- 公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料:過去2年間分
- 身元保証書(日本人配偶者またはその他の身元保証人が必要):身元保証人が、申請者の身元を保証する書類です。
補足書類
補足書類は、申請者の状況によって異なります。主なものとしては、以下のものがあります。いずれも申請者の状況を証明するために必要な書類となります。- 婚姻関係を証明する書類(戸籍謄本など)
- 生計を維持できることを証明する書類(課税証明書、源泉徴収票、預金通帳の写しなど)
- 住居に関する書類(賃貸契約書、不動産登記簿謄本など)
永住権の審査期間:どれくらいかかる?
標準処理期間
法務省では審査期間の目安として「標準処理期間」を公表しています。永住権申請の標準処理期間は4ヶ月となっています。ただし、これはあくまで目安であり、申請内容や個別の事情によって審査期間は変動します。実際は半年から1年といったところです。最短で3ヶ月というケースも過去に経験がありますが、例外的と言えるでしょう。審査期間が長期化するケース
以下のような場合は、審査期間が長期化する可能性があります。- 提出書類に不備がある場合:書類の不足や不備があると、追加書類の提出を求められるため、審査が遅れる可能性があります。
- 過去の在留状況に問題がある場合:過去に入管法の違反や犯罪歴がある場合は、審査が厳しくなり、時間がかかることがあります。
やはり審査を長期化させない一番の近道は審査資料の内容を充実させることです。申請にあたって不安がある面についてはしっかりフォローするための資料を添付するようにし、それ以外についても入国管理局から追加提出を求められることがなるべくないようにしましょう。
永住権申請の手続きと流れ
永住権申請の要件確認
まずは法務省のウェブサイトなどを参考に、自身が永住権申請の要件を満たしているか在留歴や収入、年金の支払い履歴などをチェックしましょう。必要書類の準備
法務省のウェブサイトなどを参考に、必要書類を全て揃えましょう。必要であれば、住民票や戸籍謄本などの書類を取得しておきます。入国管理局への申請
必要書類が揃ったら、居住地を管轄する地方入国管理局へ申請します。2025年からはオンライン申請も可能となるとされています。郵送で申請することはできませんのでそこは注意してください。現時点では窓口に直接持参することが必要です。審査
入国管理局では提出された書類に基づいて、永住許可の条件を満たしているかどうか審査が行われます。審査の内容は主に、提出書類の確認、申請内容の事実確認、日本での生活状況の確認などです。結果通知
審査結果は通常申請から半年から1年後、書面で通知されます(ハガキが届くのが通常です)。審査の結果永住許可が下りた場合は在留カードが交付されます。不許可の場合には、不許可理由が通知されます(不許可通知は簡易書留で届くのが通常です)。永住権申請の注意点
正確な情報提供
申請書類には絶対に虚偽の内容を記載しないでください。虚偽の申請は、不許可になるだけでなく、刑事罰の対象になる可能性もあります。申請書類には必ず正確な情報を記入するようにしましょう。申請書類の不備に注意
必要書類は事前にしっかりと確認し、不備なく準備しましょう。不備があると、追加書類の提出を求められたり審査が遅れる原因となります。必要であれば、チェックリストなどを活用すると良いでしょう。不明点があれば入国管理局に問い合わせるなどして、事前に確認しておきましょう。専門家への相談
不安な点や疑問点がある場合は申請取次行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ確実な申請が可能となります。申請取次行政書士は入管業務に関する専門家なので、申請書類の作成サポートや、手続きに関するアドバイスなどを受けることができます。専門家:行政書士に依頼するメリット
専門知識と経験
申請取次行政書士は入管業務に関する専門知識と豊富な経験を持っています。複雑な法令や手続きにも精通しているため、安心して依頼することができます。時間と労力の節約
申請書類の作成や提出、関係機関とのやり取りなどを代行してくれるため、時間と労力を大幅に節約できます。許可の可能性の向上
専門家のサポートを受けることで申請書類の不備や不足を防止し、許可の可能性の向上が期待できます。まとめ
永住権の取得は将来の不安を解消し、日本でより安定した生活を送るための大きな一歩となります。申請には、時間と労力が必要となりますが、正しい情報収集と準備を進めることが大切です。安心して手続きを進めるため、専門家である申請取次行政書士への相談も検討してみましょう。審査期間の長期化を防ぐにはやはり審査資料の充実が一番のカギとなります。資料の収集や作成はかなり面倒な作業ですが、結果として申請にかけないといけない時間を減らしてくれる可能性はおおいにあります。
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