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赤字・債務超過での技術・人文知識・国際業務ビザ更新|不許可を回避する「事業計画書」作成

就労ビザ

「今期も赤字が続いている…外国人社員のビザ更新はできるのか?」
「決算書が真っ赤だが、会社のせいで彼らを帰国させるわけにはいかない」

赤字決算や債務超過を抱える中小企業の経営者・人事担当者にとって、技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)の更新申請は大きな不安材料です。
結論から言えば、赤字決算でもビザ更新は可能です。
ただし、何の説明もなく決算書だけ出せば通るわけではなく、「なぜ赤字なのか」「どう改善するのか」を論理的に説明する理由書や事業計画書が必須になります。

本記事では、入管審査の実態と、赤字のパターン別リスク度、審査官を納得させる理由書・事業計画書の構成と例文、添付が望ましい補強資料まで、申請取次行政書士の実務経験に基づき徹底解説します。いわゆるポータル系サイトには「赤字でも大丈夫です」としか書いていない部分を、現場の実務レベルまで掘り下げ、まず簡潔に結論を示し、続いて詳細に解説するスタイルでわかりやすく説明します。


技人国ビザ更新と会社の決算の関係

結論

技人国ビザ更新では、会社の黒字・赤字が直接の許可要件ではありませんが、申請者に給与を支払う会社の「事業の継続性」と「給与支払能力」は申請者の生活の安定にとってとても重要なため、厳格に審査されます。赤字でもその理由が明確で、かつ具体的な改善計画があれば更新は可能ではありますが、適切な対応が必要です。


解説:審査の実際

入管が技人国ビザ更新で重視するのは以下の2点です。


  1. 会社が存続し続けられるか(事業の継続性)
    すぐに倒産しそうな会社で外国人を働かせることは、本人の生活基盤が失われるリスクがあるため、入管は慎重になります。

  2. 約束した給与を払い続けられるか(給与支払能力)
    経営難による給与遅配や大幅減額は、在留資格の要件(日本人と同等以上の報酬)を満たさなくなる可能性があります。もっと言えば雇用されている外国人が給料を支払ってもらえなくなった場合のリスクについても考えているといえます。

逆に言えば、赤字であっても以下の条件が揃えば許可の可能性は高いです。


  • 赤字の原因が一過性(設備投資、為替変動など)であると説明できる

  • 給与の遅配や未払いが一切ない

  • 来期以降の回復見込みを示す具体的な根拠がある

経営・管理ビザの実務でも「赤字=即不許可」ではなく、「理由と改善計画があれば更新可」とされており、技人国ビザでも基本的には同様のロジックでの実務の運用であると考えられます。


赤字・債務超過のパターン分類とリスク度(早見表)

結論

端的に言えば単年度赤字ならリスク中、2期連続赤字なら高リスク、債務超過なら非常に高リスクといってよいでしょう。それぞれのフェーズで求められる書類のレベルが異なります。


解説と早見表

決算状況 リスク度 必要な対応策
単年度赤字(債務超過なし) 理由書 + 補強資料(受注書・契約書など)
2期連続赤字(債務超過なし) 詳細な理由書 + 事業計画書 + 改善策の証拠(コスト削減案等)
債務超過(負債>資産) 非常に高 詳細な事業計画書 + 資金調達の証明(増資・融資・支援) + 専門家(中小企業診断士・税理士等)の評価書推奨

ポイントは「赤字の深刻度」と「改善の見込み」のバランスです。
単年度赤字なら「先行投資」や「一過性の特殊要因」で説明しやすいですが、連続赤字や債務超過になると「構造的な経営難」とみなされる可能性が高くなり、より詳細な改善計画と、それを裏付ける資金繰りの証明が求められます。まずは自社がどのゾーンにいるかを把握し、それに応じた準備を始めましょう。


入管が見ている「赤字の本質」:何がダメで、何が許されるのか

結論

売上減少が続き改善策もない「放置された赤字」はNG。一方、設備投資や一時的要因による「理由ある赤字」で、回復の根拠があればOKです。


解説:審査官は何を見ているのか

入管の審査官は「赤字の金額」も見ていますが、それよりも「その赤字が経営破綻や給料の未払いにつながるものかどうか」を見ていると思われます。

❌ ダメなパターン(不許可リスク大)


  • 売上が右肩下がりで、有効な対策を講じていない

  • 給与遅配や社会保険料の未納が発生している(最悪のサイン)

  • 決算書上の現預金が枯渇しており、資金ショート寸前

  • 事業計画書がなく、「頑張ります」という精神論だけの説明

⭕ 許されやすいパターン(許可可能性あり)


  • 初期投資・設備投資による一時的な赤字
    例:新店舗開設、機械購入、システム開発など、将来の売上増を見込んだ支出(減価償却費増)が原因の場合。

  • 外部ショックによる一過性の赤字
    例:コロナ禍、急激な円安、主要取引先の倒産など。これらが収束すれば回復する見込みがある場合。

  • 直近の試算表で黒字化している
    前期の決算書は赤字でも、直近数か月の試算表が黒字であれば、「改善傾向にある」という強力な証拠になりえます。

「赤字決算の理由書」:構成例とNG表現

結論

理由書は「赤字の原因(過去)→ 一時的である根拠(現在)→ 改善策(未来)→ 外国人社員の必要性」の流れで書きます。「社員一丸となって頑張ります」だけの抽象論は絶対NGです。


リカバリーのための推奨構成

  1. 会社概要・事業内容(簡潔に)

  2. 今期赤字になった具体的な理由(数字を使って外部要因+内部要因を説明)

  3. 赤字が一時的であることの根拠(現在の受注状況、契約残など)

  4. 黒字化に向けた具体的な改善策(コスト削減額、新規獲得目標など)

  5. 外国人社員の役割と、ビザ更新が必要な理由

例文(必要に応じて調整を)

【NG例文】
「景気悪化の影響で赤字になりましたが、来期は社員一同売上アップを目指して頑張りますので、更新をお願いします。」
→ 具体策がなく、審査官には何も伝わりません。

【OK例文の方向性】
「当社は○○機器の製造・販売を主事業としており、今期は以下の理由により営業損失△△万円を計上いたしました。

1. 赤字の要因
新工場建設に伴う設備投資を行い、減価償却費が前期比+△△万円増加したことが主因です。本業の受注自体は堅調に推移しております。

2. 改善の見通し
新工場の稼働により生産能力が向上し、既に大手取引先A社からの受注が確定しております(別紙:注文書参照)。これにより来期は売上高○○万円、営業利益△△万円の黒字転換を見込んでおります。

3. 外国人社員の必要性
○○氏は、上記の海外取引先との技術的な調整業務を担当しており、当社の事業回復および拡大には不可欠な人材です。」

ポイント: 決算書の数字と整合性を持たせ、「なぜ赤字か」「どうやって黒字にするか」を具体的に書くことが最重要です。


事業計画書作成でのポイント

結論

入管向けの事業計画書は銀行融資のような精緻なものでなくてOKです(ただし上述通り会社状況による)。A4用紙1~2枚で、来期の売上・利益目標と、それを達成する具体的な手段を示せば基本的には十分です。


解説

中小企業診断士が作るような30ページの計画書は不要です(できるのならもちろん作成しても構いませんが)。入管が知りたいのは「この会社は来年も続きそうか」「給料は払えそうか」という最低限かつ最重要な情報と言えるからです。

盛り込むべき要素


  1. 1~3年の売上・利益目標(表形式で簡潔に)

  2. 目標達成の具体的手段
    例:新商品の投入、販路拡大(具体的な取引先名)、経費削減(何をどれだけ削るか)

  3. 数字の裏付け
    契約書、注文書、見積書など、「売上見込みは妄想ではない」証拠

書き方例


■ 来期業績見込み(単位:千円)
[売上高] 今期:50,000 → 来期目標:60,000(+20%)
[営業利益] 今期:▲3,000 → 来期目標: 2,000(黒字化)
■ 達成手段
1. 新規取引先A社との契約締結(月額50万円 × 12ヶ月 = 600万円増)
→ 根拠資料:基本取引契約書(別紙1)
2. 広告宣伝費の見直し(Web広告への移行により年間100万円削減)
3. 既存顧客B社からの受注増(新製品導入により年間300万円増)
→ 根拠資料:発注書(別紙2)

基本的にはこれらのことがきちんと記載されていれば十分だといえます。大事なのは「絵に描いた餅」ではなく、根拠ある数字であることです。


添付すると理由書や事業計画書の補強となる資料リスト

結論

決算書・理由書・事業計画書に加え、試算表・契約書・銀行残高証明・増資登記などを添付すると、説得力が格段に増すと思われます。


具体的な補強資料

  • 直近の試算表:決算後の数か月が黒字なら、これだけで「回復傾向」を示す強力な材料になります。

  • 主要取引先との契約書・注文書・請求書:売上見込みが確実であることを証明します。

  • 銀行残高証明書:手元資金があり、当面の資金繰りに問題がないことを示します。

  • 借入金の返済予定表:銀行返済が滞りなく行われている証明になります。

  • 増資の登記簿謄本:オーナー等による資本注入で財務体質を改善した証拠です。

  • 親会社・スポンサーからの支援確約書:資金援助がある場合、その契約書等。

  • 外国人本人の雇用契約書:給与額や業務内容が適正であることを改めて示します。

「出せる資料は全部出す」くらいの姿勢で準備すると、審査官に「誠実さ」と「回復の本気度」が伝わり、心証が良くなると思われます。


ケーススタディ:どこまでやる必要があるのか

結論

実際の許可事例を見ると、赤字でも理由と改善計画があれば更新できている場合が多いです。逆に「何も説明しない」と不許可リスクが高まると言えるでしょう。(以下は一例であり、必ず同様の結果になるわけではありません)

ケース1:単年度赤字・債務超過なし


  • 状況:新規設備投資で減価償却費が増加し、営業赤字に転落。

  • 対策:理由書で「投資による一時的な赤字」を説明+来期の大口契約書を添付。

  • 結果更新許可

ケース2:2期連続赤字


  • 状況:主要取引先の不振で売上が減少し、2期連続で赤字。

  • 対策:詳細な事業計画書を作成。新規顧客開拓リストとコスト削減計画(役員報酬減額等)を提示。

  • 結果更新許可

ケース3:債務超過


  • 状況:累積赤字が膨らみ、負債が資産を上回る状態。

  • 対策:社長個人からの借入を資本金に振り替える増資(DES)を実施し、登記簿を添付。さらに税理士作成の経営改善計画書を提出。

  • 結果更新許可

共通するのは「現状を正直に説明し、改善の具体策と証拠を示した」点です。隠そうとせず、前向きな対策を示すことが鍵です。厳しい申請とは言え虚偽や隠し事は厳禁です。


実務フローと専門家に相談すべきタイミング

結論

2期連続赤字・債務超過・資金ショートの兆候が出た時点で、早めに申請取次行政書士等の専門家に相談することが望ましいといえます。自力申請で不許可になると、リカバリー(再申請)は非常に困難になります。


申請までの標準スケジュール

  1. 決算確定(税理士と連携し、確定申告書控えを用意)

  2. 赤字要因の分析・改善策の検討(社内で議論)

  3. 理由書・事業計画書の起案(ここが一番重要)

  4. 補強資料(契約書・試算表等)の収集

  5. 申請書類一式の提出(在留期限の3か月前から申請可能。早めに出すのが鉄則)

専門家に任せたほうがいいパターン

  • 2期連続赤字で、「改善説明」のロジック構築が難しい

  • 債務超過状態で、増資や資金調達の証明が複雑

  • 給与遅配が過去にあった(非常に危険な状態)

  • 過去に不許可歴があり、次は絶対に落とせない

  • 社内に書類作成のリソースがない

人材紹介会社は「採用」までは手伝ってくれますが、ビザ更新の責任は取ってくれません。赤字決算での更新は、実務経験のある申請取次行政書士に相談することで、不許可リスク可能性を大幅に下げられます。


まとめ

赤字決算での技人国ビザ更新は「即アウト」ではありません。大切なのは、赤字の理由を誠実に説明し、改善計画を具体的な数字と証拠で示すことです。


  • 単年度赤字なら、理由書と補強資料で対応可能な場合が多い。

  • 連続赤字や債務超過なら、詳細な事業計画書や資金繰りの証明が必須。

自社の状況を冷静に分析し、必要なレベルの書類を揃えましょう。「大手人材サイトには『赤字でも大丈夫』としか書いていないが、実際どうすればいいのか分からない」という方は、手遅れになる前に実務に精通した申請取次行政書士へ相談することをお勧めします。外国人社員の生活を守り、会社の信用を維持するために、万全の準備で更新申請に臨んでください。

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この記事を書いた行政書士は
勝見 功一

はじめまして。京都市上京区でビザ申請手続きのお手伝いをさせていただいております申請取次行政書士の勝見です。
まだまだ若輩者ですが、持ち前のフットワークの良さを活かして迅速かつ誠実に対応させていただきます。初回の相談は無料ですのでまずはお気軽にお問い合わせ下さい。
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