高度専門職ビザは、日本で働く外国人にとって最も魅力的な在留資格の一つです。永住権申請の期間短縮や家族帯同など、多くの優遇措置が受けられるこのビザですが、取得のためには年収を含む様々な要件を満たす必要があります。「年収はいくら必要なのか?」「基本給以外の手当は年収に含まれるのか?」「見込み年収はどう証明すればいいのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。高度専門職ビザはポイント制による審査が行われ、年収はポイント計算において重要な要素となります。しかし、どの収入項目が年収として認められるかについては、多くの申請者が混乱しています。本記事では、高度専門職ビザの年収要件や認められる項目について詳しく解説します。基本給や賞与、各種手当の扱いから、見込み年収の証明方法まで、申請者が知りたい情報を網羅的に提供します。外国人就労希望者はもちろん、外国人材の採用を検討している企業担当者にとっても、有益な情報源となるでしょう。
高度専門職ビザとは?基本情報と年収要件の概要
高度専門職ビザは、日本政府が高度な専門性や技術を持つ外国人材を受け入れるために設けた在留資格です。このビザは、ポイント制による審査で一定以上のポイントを獲得した外国人に付与され、多くの優遇措置が提供されます。年収はポイント計算において重要な要素であり、高い年収ほど多くのポイントを獲得できます。ここでは、高度専門職ビザの基本情報とポイント制における年収要件の概要について解説します。
高度専門職ビザの特徴とポイント制の仕組み
高度専門職ビザは、以下の特徴を持つ特別な在留資格です:
特徴:
- ポイント制による審査:学歴、年収、研究実績などに基づいてポイントが付与される(70ポイント以上で取得可能)
- 優遇措置:永住権申請期間短縮(1年または3年)、配偶者の就労許可、親の帯同許可(一定条件あり)など
- 対象分野:学術研究、技術開発、経営管理など高度な専門性が求められる分野
ポイント制の仕組み:
高度専門職ビザのポイント制は、以下のカテゴリーで評価されます(各分野で違いがある事には注意。ポイント計算表を必ず確認すること):
- 学歴:最終学歴によってポイントが異なる(博士号:30ポイント、修士号:20ポイント、学士号:10ポイント)
- 職歴:実務経験年数によってポイントが異なる(10年以上:20ポイント、7年以上:15ポイント、5年以上:10ポイント)
- 年収:年収額によってポイントが異なる(1,000万円以上:40ポイント、900万円以上:35ポイント、以下段階的に減少)
- 年齢:若い年齢ほど高いポイントが付与される(30歳未満:15ポイント、35歳未満:10ポイント、40歳未満:5ポイント)
- その他:日本語能力、研究実績、特許取得などでもポイントが付与される
ポイント:高度専門職ビザの取得には70ポイント以上が必要です。年収は配点が高いため、年収要件を満たすことは申請成功の重要な鍵となります。
年収要件が高度専門職ビザに与える影響
高度専門職ビザのポイント制において、年収は配点が高く、申請の成否を左右する重要な要素です。年収要件が高度専門職ビザに与える影響は以下の通りです(高度学術研究分野 高度専門・技術分野の場合):
年収別のポイント配分:
| 年収 |
ポイント |
| 1,000万円以上 |
40ポイント |
| 900万円以上1,000万円未満 |
35ポイント |
| 800万円以上900万円未満 |
30ポイント |
| 700万円以上800万円未満 |
25ポイント |
| 600万円以上700万円未満 |
20ポイント |
| 500万円以上600万円未満 |
15ポイント |
| 400万円以上500万円未満 |
10ポイント |
年収要件の影響:
- 高いポイント獲得:高年収であれば多くのポイントを獲得でき、他の項目(学歴や職歴など)が不足していても補うことができます
- 優遇措置の拡大:80ポイント以上獲得すると、さらに優遇措置が拡大します(高年収はこの達成に貢献)
注意:年収が低い場合でも、学歴や研究実績、日本語能力などで補うことができます。しかし年収が300万円未満の場合、ポイントが付与されないだけでなくそもそも高度専門職と認められないため、最低でも300万円以上の年収が必要です。
また、年齢も年収のポイントと関連するので要注意です。
高度専門職ビザ申請における年収要件の詳細
高度専門職ビザ申請において、年収要件は重要な審査ポイントです。しかし、「年収」として認められる項目や、見込み年収の扱いについては多くの申請者が混乱しています。ここでは、年収として認められる項目とその基準、見込み年収の扱いと証明方法について詳しく解説します。
年収として認められる項目とその基準
高度専門職ビザ申請において、年収として認められるかの判断が必要な項目は以下の通りです:
1. 基本給:
- 毎月定期的に支給される基本給は年収の中心的な要素です
- 基本給は12ヶ月分が年収として計算されます
2. 賞与・ボーナス:
- 確定賞与:雇用契約書などで支給が確約されている賞与は年収に含まれます
- 業績連動賞与(△):業績に応じて変動する賞与も、過去の実績と支払い予定証明書に記載などがあれば年収に含まれる可能性もありますが、基本的には否定と考えていただく方がよいでしょう
3. 各種手当:
- 住宅手当:実費の補填という性質を持つため、原則否定
- 通勤手当:実費の補填という性質を持つため、原則否定
- 役職手当:役職に応じて支給される手当は年収に含まれます
- 資格手当:特定の資格保有者に支給される手当は年収に含まれます
- 家族手当:実費の補填という性質を持つため、原則否定
4. 残業代:
- 固定残業代(みなし残業代)は年収に含まれます
- 変動する残業代は、過去の実績に基づいて年収に含まれる場合がありますが、基本的には否定と考えていただく方がよいでしょう
ポイント:年収として認められるためには、「定期的・継続的に支給されること」「金額が明確であること」「雇用契約書などで明記されていること」などが重要です。
また性質の面で見ると、あくまでも労働サービスの対価としての性質を持つこと、また課税対象となることもあります。
「残業代も労働サービスの対価ではないか」と考える方も当然いると思いますが、高度専門職で証明する年収は過去の実績だけではなく、これからの見込み収入です。過去残業でいくら稼いでいるかはこれからの残業の金額を保証しないのです。このあたり他の在留資格が過去の収入を重視することと異なる特徴と言えます。
見込み年収の扱いと証明方法
高度専門職ビザ申請時には、ポイントの関係で実際の年収よりも「見込み年収」が重要になる場合があります。:
1. 見込み年収の証明方法:
- 雇用契約書:基本給、賞与、各種手当などが明記された雇用契約書は重要な証明書類です
- 給与見込証明書:見込み年収の性質上、雇用主が発行する給与見込証明書も重要な証明書類です
- 課税証明書・納税証明書:給与条件の真正を担保するために重要な証明書類です
- 支払い予定証明書など:上記書類だけで足りない場合は補足資料として提出します
注意:見込み年収が実際の支給額と大きく異なる場合、後の更新時に問題となる可能性があります。実現可能な年収を証明することが重要です。
高度専門職ビザで認められる手当と注意点
高度専門職ビザ申請において、基本給だけでなく各種手当も年収に含めることができます。しかし、すべての手当が認められるわけではなく、一部の手当は年収として認められない場合があります。ここでは、認められる手当の種類と条件、認められない手当や注意すべきポイントについて詳しく解説します。
認められる可能性の高い手当の種類と条件
高度専門職ビザ申請において、年収に含めることができる可能性が高い(実際には一旦内容を精査するのが望ましい)主な手当は以下の通りです:
1. 役職手当:
- 条件:役職や職責に応じて定期的に支給される手当
- 注意点:役職変更に伴い金額が変動する場合でも、支給基準が明確であれば年収に含まれる可能性がある
2. 資格手当・技能手当:
- 条件:特定の資格や技能を持つ従業員に支給される手当
- 注意点:資格取得後に支給が開始される場合は、資格取得の見込みと支給基準を明確にすることが望ましいです
ポイント:手当が年収として認められるためには、「定期的・継続的に支給されること」「金額または計算方法が明確であること」「雇用契約書や給与規定に明記されていること」などの条件を満たすこと、課税対象であることなどが重要です。
認められない手当や注意すべきポイント
高度専門職ビザ申請において、以下の手当や給付は年収として認められない、または認められにくい場合があります:
1. 一時的な支給や臨時手当:
- 赴任手当・引越手当:一度限りの支給であるため、年収には含まれません
- 入社祝い金:一時的な支給であるため、年収には含まれません
- 臨時ボーナス:定期的でない臨時的な支給は、年収に含まれない場合があります
2. 福利厚生として扱われる給付:
- 社宅の無償提供:金銭給付ではないため、原則として年収には含まれません
- 社員食堂の食事補助:福利厚生として扱われるため、年収には含まれません
- 健康保険・年金の会社負担分:福利厚生として扱われるため、年収には含まれません
3. 不確定な手当や変動する手当:
- 歩合給・インセンティブ:業績に応じて大きく変動する場合、過去の実績がなければ年収に含めるのが難しい場合があります
- 残業代:固定残業代(みなし残業代)は年収に含まれますが、実績に応じて変動する残業代は、過去の実績がなければ年収に含めるのが難しい場合があります
- 業績連動型賞与:支給額が不確定な場合、最低保証額のみが年収として認められる場合があります
4. 実費の補填という性質を持つ手当:
- 住宅手当:実費の補填という性質を持つため、原則否定
- 通勤手当:実費の補填という性質を持つため、原則否定
注意:年収として認められるかどうか判断が難しい手当がある場合は、事前に専門家(行政書士など)に相談することをお勧めします。また、申請時には手当の性質や支給条件を明確に説明する資料を準備しましょう。
高度専門職ビザ申請者向け|年収要件を満たすための対策
高度専門職ビザの年収要件を満たせない場合でも、いくつかの対策を講じることで申請の可能性を高めることができます。ここでは、年収不足時に検討すべき選択肢と、ポイント制で他の項目を活用する方法について解説します。
年収不足時に検討すべき選択肢
高度専門職ビザの年収要件を満たせない場合、以下の対策を検討してみましょう:
1. 雇用条件の交渉:
- 基本給の交渉:雇用主と交渉し、基本給の増額を検討する
- 手当の追加:役職手当や資格手当など、追加の手当を設定してもらう
- 賞与の明確化:賞与の支給を雇用契約書に明記してもらう
2. 給与構成の見直し:
- 固定残業代の設定:残業が見込まれる場合、固定残業代(みなし残業代)として給与に組み込んでもらう
- 役職の明確化:役職に応じた手当を設定してもらう
3. キャリアアップの検討:
- 転職:より高い給与を提示する企業への転職を検討する
- スキルアップ:専門スキルを向上させ、より高い給与を得られる職種へのキャリアチェンジを検討する
4. 他の在留資格の検討:
- 技術・人文知識・国際業務ビザ:高度専門職ビザの要件を満たせない場合、まずは技術・人文知識・国際業務ビザの取得を検討する
- 経営・管理ビザ:起業や会社経営を検討している場合、経営・管理ビザの取得を検討する
ポイント:年収要件を満たすための交渉は、入社前や契約更新時が最適なタイミングです。自分のスキルや経験、市場価値を明確に示し、適切な報酬を求めましょう。
高度専門職ビザ申請や年収要件に関する専門家への相談
高度専門職ビザの申請や年収要件の確認は複雑なプロセスであり、専門家(申請取次行政書士など)に相談することで成功可能性を高めることができます。ここでは、専門家に相談するメリットと、信頼できる専門家の選び方について解説します。
申請取次行政書士等の専門家に相談するメリット
高度専門職ビザ申請や年収要件の確認において、申請取次行政書士などの専門家に相談することで以下のようなメリットがあります:
1. 最新情報の提供:
- ポイント制の最新基準や変更点について正確な情報を得られる
- 年収要件や認められる項目について最新の審査傾向を把握している
- 法改正や運用変更に関する最新情報を入手できる
2. 年収要件に関する具体的なアドバイス:
- 年収として認められる項目の具体的な判断基準についてアドバイスを受けられる
- 雇用契約書の記載方法や必要な証明書類についてアドバイスを受けられる
- 年収不足時の対策や他のポイント獲得方法について相談できる
3. 申請書類の適切な準備:
- 必要書類の洗い出しと準備をサポート
- 年収証明に関する重要書類の作成支援
- 書類の不備や矛盾を事前にチェック
4. 個別ケースへの対応:
- 申請者の状況(学歴、職歴、年収など)に応じた最適な申請方法を提案
- 特殊なケース(年収構成が複雑な場合など)への対応
- 過去の類似ケースの経験に基づくアドバイス
5. 申請後のフォローアップ:
- 入国管理局からの追加資料要求への対応
- 申請状況の確認と進捗報告
- 不許可となった場合の再申請の提案
ポイント:高度専門職ビザの申請では、年収要件の証明が重要なポイントとなります。専門家は、年収として認められる項目や証明方法について具体的なアドバイスを提供してくれます。
専門家選びのポイントと相談タイミング
信頼できる専門家を選び、適切なタイミングで相談することが重要です:
専門家選びのポイント:
- 実績:高度専門職ビザの申請実績が豊富な行政書士を選ぶ
- 専門性:ポイント制や年収要件について詳しい知識を持っている専門家を選ぶ
- 最新情報:法改正や運用変更について常に最新情報を把握しているか確認する
- 料金体系:料金体系が明確で、追加費用についても事前に説明があるか確認する
相談タイミング:
- 雇用契約締結前:雇用条件や年収構成について交渉する前に相談すると、年収要件を満たすための適切な条件の把握ができる
- 申請準備段階:必要書類を整え始める段階で相談すると、年収証明に必要な書類を適切に準備できる
- 年収構成に不安がある場合:年収として認められる項目や証明方法に不安がある場合は早めに相談する
- 不許可後:不許可となった場合は速やかに原因分析と再申請戦略について相談することが重要
相談時に準備しておくと良い資料:
- 雇用契約書または内定通知書(年収構成が分かるもの)
- 給与明細(過去の実績がある場合)
- 学歴証明書(卒業証明書、成績証明書など)
- 職歴証明書(在職証明書、推薦状など)
- 研究実績や特許取得に関する資料(該当する場合)
- 日本語能力証明書(日本語能力試験の合格証など)
注意:専門家への相談は無料相談から始めることができる場合も多いです。まずは無料相談を利用し、自分に合った専門家を選ぶことをお勧めします。
まとめ:高度専門職ビザの年収要件を満たすためのポイント
本記事では、高度専門職ビザの年収要件と認められる項目について詳しく解説しました。以下に重要なポイントをまとめます:
1. 年収要件の重要性:
- 年収は高度専門職ビザのポイント制において配点が高く、申請の成否を左右する重要な要素
- 年収が高いほど多くのポイントを獲得でき、他の項目が不足していても補うことができる
2. 年収として認められる項目:
- 基本給、確定賞与、役職手当など、定期的・継続的に支給される項目
- 金額が明確で、雇用契約書などに明記されている項目で労務サービスの対価といえるもの
3. 年収要件を満たすための対策:
- 雇用条件の交渉(基本給の増額、手当の追加、賞与の明確化など)
- 給与構成の見直し(固定残業代の設定など)
- キャリアアップの検討(転職、スキルアップなど)
4. 他の項目でポイントを補う方法:
- 学歴(博士号30ポイント、修士号20ポイント)
- 職歴(10年以上20ポイント、7年以上15ポイント)
- 研究実績(特許取得15ポイント、論文発表15ポイント)
- 日本語能力(N1レベル15ポイント、N2レベル10ポイント)
5. 専門家への相談:
- 年収要件や認められる項目について不安がある場合は、専門家(申請取次行政書士など)に相談することが有効
- 雇用契約締結前に相談すると、年収要件を満たすための適切な条件の情報が得られる
高度専門職ビザの取得には、年収要件を満たすことが重要ですが、それだけでなく学歴や研究実績などの強みを活かしてポイントを獲得することも大切です。本記事の情報を参考に、適切な準備と戦略で高度専門職ビザの取得を目指しましょう。
最後に:高度専門職ビザは、日本でのキャリアを築く上で非常に有利な在留資格です。年収要件を満たすための準備を十分に行い、必要に応じて専門家に相談することで、申請の成功可能性を高めることができます。
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