行政書士かつみ法務事務所
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永住権取り消しの原因と対応策

日本の永住権取り消し制度は、外国人の方が日本で永住権を取得した後も、特定の条件を満たす場合にその永住権を取り消すことができる制度です。2024年の入管法改正により取り消し事由が追加され、この制度はさらに厳格化されました。
まず注意が必要なのは取り消すことが「できる」であって、必ず取り消されるということではないことです。

永住権を取り消される主な理由は、法律違反や犯罪行為、または偽造書類の提出などが挙げられます。この辺りは重大な問題であり、永住権を有効に保つためには法令順守が不可欠であるというのは納得のいくところではあります。しかし永住権取り消し事由には住所変更などの届出不履行という一見すると軽微に思える内容も取消事由となりえると (入管法 第22条第7号、第19条の2)されています。ここではそれぞれの取り消し事由について詳しくみていきます。 帰化、永住権申請の手続きに関するご相談はこちらまで

永住権取り消しの基礎知識

永住権は外国人が日本において永続的に居住するための資格です。永住権を取得した場合でも、特定の条件該当すると取り消される可能性があります。具体的な条件や取り消しの理由は様々ですが、代表的な理由としては法令違反や犯罪行為、虚偽の申し立てや偽造書類の提出が挙げられます。その一方で2024年度の改正で追加された税金や社会保険料の未納、届出不履行といった一見すると取り消し事由とするのは酷ではないかと思われるものも含まれています。永住権を取り消す際には厳格な手続きと判断が行われますが、それでは実際の取り消し手続きはどのくらい行われているのでしょうか。

2020年のデータによりますと、同年6月末時点での永住者の総数は約80万人、同年に永住権を取り消された方は3人ということです。
取り消された方の割合は極めて低い数字といえ、一般的に言えば日本の法令を遵守して普通に生活していれば永住権の取り消しを恐れる必要はほとんどなかったと言えました。 過去の例を見れば永住権の取り消しは例外的なケースであり、主に犯罪行為や虚偽の申請が理由となるものだと考えておけば良かった、というところでしょう。

永住権を保持し続けるメリット

永住権を取得することで、日本での生活が安定し、将来にわたって居住できる安心感が得られます。また労働やビジネス活動において、就労ビザの制約を受けることなくかつ更新のわずらわしさからも解放された自由な活動が可能となります。単に生活面だけをとっても、ローンの組みやすさなど社会的な安定性が他の在留資格(ビザ)とはかなり違うことが見て取れます。

永住権が取り消されるケース

日本に永住権を持つ方にとって、永住権が取り消されることは生活基盤を揺るがしかねない深刻な問題であり、避けたいところでしょう。永住権が取り消される主なケースとしては、重大な法律違反や犯罪行為、また偽造書類の提出や虚偽の申告も永住権の取り消しの原因となります。このような行為だけが対象であるのならば通常はあまり関係のない制度だと考えることもできるのですが、居住地の届出履行を怠ったことなど、あまりにもペナルティが重すぎるのでは?と思えるような取り消し事由もあるのです。

ここからはそれぞれの取り消し事由及び取り消し制度とは関係ありませんが、永住権を失う場合について個別に説明していきます。

虚偽の申請または不正な手段による許可取得

虚偽の申請または不正な手段による許可取得(入管法第22条第4号)。永住許可の申請時に虚偽の事実を申告したり、偽造書類を提出するなど、不正な手段を用いたことが発覚した場合、永住許可が取り消されます。

これは至極当然の規定と言えるでしょう。永住取得の根拠となる事実が虚偽であり存在しなかったと言えるからです。ただし、どの程度の虚偽から許されなくなるのかは考える必要のある問題でしょう。とはいえ入管への申請では絶対に虚偽事実の申告などは行わないようにしましょう。これは永住に限らずです。永住に至る過程での他の在留資格の申請における虚偽が永住の申請に影響することは大いにあり得るのです。

転居から90日以内に新住居地の届出をしない・虚偽の住居地を届け出た

転居による住所変更後90日以上放置すると永住権取消しの対象になります(ただし届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く)(入管法 第22条第7号、第19条の2)。また、虚偽の住居地を届け出ることも永住権取消しの対象になります。

この規定について、虚偽の住居地を届け出ることについては犯罪につながる可能性も否定できないことからやむを得ないとの意見もありますが、届出不履行についてはうっかり期限を忘れてしまった場合など、悪意のない届出不履行でも厳しい処分を受ける可能性があること自体を問題視する声は根強いです。
通常は届出不履行程度でのペナルティがこれほど重大な結果を持たらすものであることはほとんどなく、諸外国でも見られません。通常是正の機会が与えられたり、あるいは軽微な行政処分(例えば、過料など)で対応されることが一般的です。

ただ、軽微な手続き上の不備や届出不履行程度で実際に永住許可が取り消されることはなく、そのような厳しい措置が取られることはないと基本的には理解されている、と言われています。

税金や社会保険料の未納

2024年の入管法改正で追加された永住取り消し事由がこの税金や社会保険料の未納です。具体的な事例には以下のようなケースが挙げられます。永住者が「故意に」住民税や国民年金保険料などの公的義務を怠った場合、永住許可が取り消される可能性があります。これは税金や社会保険料の未納が単なる経済的困難によるものでなく、故意に行われた場合に適用されます。ただどういった場合に「故意に」と言えるかと言うと、ある永住者が経済的な理由から住民税を数ヶ月間未納にしていた場合、地方自治体からの通報により出入国在留管理庁がその事実を確認すると故意の未納とみなされ、永住許可が取り消される可能性があるともいわれています。

税金や社会保険料の未納で永住権を失うことの問題点は、この事由で永住権を失った場合、再取得が難しいということにもあります。再取得には単に未納の解消だけでは不十分で、一定期間の良好な納税実績が必要となるからです。

この改正内容に対し「永住者の皆さんの生活の安定を損なうことのないよう、慎重に検討する」「経済的な理由で滞納した場合などは、故意の未納とは見なさない」と、抑制的な運用を行うように取れる答弁が見られますし、入管の永住許可制度の適正化Q&Aにも「対象者の我が国への定着性や生活状況等にも十分配慮して判断することとし、慎重に運用します。」とあるのですが、本当に抑制的に運用されるかは懐疑的な見方(理由としてはわざわざ永住者にのみ極端に重いペナルティを課す規定を新設していることなど)の方が根強いのが現状で、そちらの方が説得力があるようにも思えます。現状運用が固まったと思われるまでは仮に厳格な運用が行われても問題がないように、例えば住民税や社会保険料について経済的な理由から納付が難しい状況に陥りそうなときはあらかじめ行政サイドと相談するなど適切な対応策を検討することが望ましいでしょう。

退去強制事由に該当することになった

退去強制事由に該当する場合、日本から強制的に出国させられることになり永住権を失います。退去強制は入管法第24条に基づき、外国人が日本に滞在している資格を失う理由を示しています。具体的には不法残留、懲役や禁固刑に相当する犯罪行為、住居侵入、傷害、窃盗などにより有罪判決を受けた場合などです。詳細は入管法第24条を確認してください。

出国や再入国に際してのもの

取り消し事由ではなく当然のように永住を失ってしまうのがこの出国や再入国に際してのものであり、実際に永住権を失う理由としては最多と言われています。
まず、再入国許可やみなし再入国許可を取らずに出国してしまった場合、永住権を失います。平成24年に「みなし再入国許可制度」が始まり、それまでは再入国許可を取得してから出国しないと在留資格を失っていたところ、出国時に再入国の意思を表示する…、実際の手続きとしては再入国する予定である旨のチェック欄にチェックを入れるだけで1年以内であれば在留資格を失うことなく再入国できるようになりました。

しかしこのみなし再入国許可制度には一つ落とし穴があります。それは従来の再入国許可には存在するやむを得ない場合の期間の延長などが「一切」できないことです。
つまり例えば実家に里帰りした時にたまたま親族が病気になり看病で1年をすぎてしまった場合であっても例外は認められずに永住権を失うことになります。

この辺りについて甘く考えている方(事情があるんだからちょっとくらいオーバーしてても何とか許してもらえるだろうといったような)が実際にかなり多く、結果これにより永住を失うパターンが一番多いのです。

これを防ぐにはやはり注意していくしかありません。くどいようですが、みなし再入国許可で期間をオーバーすれば例外は認められません。出国が1年を超える可能性が少しでもあるなら通常の再入国許可をきちんととるようにしておきましょう。

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永住権取り消しを防ぐために

永住権を取り消されることは、日本での生活に大きな影響を及ぼします。そのため、永住権取り消しを防ぐためには、以下のポイントに留意することが重要です。

まず第一に、当然ながら法令を守ることが不可欠です。入管法をはじめ法的手続きを怠らず、日本の法律に従うことが肝要です。また、直接の関係はありませんがコミュニティでの良好な振る舞いや社会貢献活動なども、日本での社会生活を良好におくっていることによりプラスの方向に働くこともあるでしょう。

さらに、出国時については出国期間などに注意し、再入国などに関連して永住権を失うことがないようにするのが望ましいでしょう。

最後に、万が一トラブルが生じた場合には早めに専門家に相談し、正確な情報を提供し共有することが肝要です。この際に絶対に虚偽の情報を提供したり、あるいは逆に不都合な情報を隠したりしないようにしましょう。

永住権に実は影響のない事由

実生活における重大事で「これは永住権に関係してしまうのでは?」と思える事柄でも実際には永住権に影響の出ない(他の在留資格に出ることはあり得ます)ものも実はたくさんあります。

まずは永住権を取得する前に日本人や永住者の配偶者といういわゆる配偶者ビザで在留していたケースにおける配偶者との離婚や死別です。これは配偶者ビザで在留している時点では重大な影響がありますが、自身も永住を取得した後は特に影響はありません。

次に経済関係で、失業したり事業に失敗した場合も就労ビザで在留している間は重大な影響があるものの、永住権には特に影響はないのです。
このあたり誤解をしている方が多いように思われます。

ただ2024年の改正で、この辺りが「直接の」影響がないのは変わらないものの、間接的には影響の出る可能性が出てきました。すでに説明した税金や社会保険料の未納による永住権取り消しです。配偶者との離婚や死別、あるいは失業や事業の失敗によって税金や社会保険料が払えなくなり、その結果永住権を取り消されるというのも考えられるからです。

とはいえ例えば両親と子供の3人の家族構成で全員永住権を所持している場合、父親が何らかの理由で永住権を取り消されたとしても、他の家族の永住権には特に影響はありません。ただし家計を支えている方が永住権を失ったことにより税金や社会保険料が払えなくなり、その結果全員永住権を取り消される…というのも考えられないことではないかもしれません。

永住権取り消しに関する最新情報に注意

最新の法改正や取り消し基準の変更に関する情報は、永住権を保有する個人や永住権を取得しようと考えている外国人にとって重要です。以前は永住権を取り消される基準や手続きについて不透明な部分がありましたが、最近では法務省のウェブサイトなどにより情報がより透明になりつつあります。また、永住権保有者や永住権を目指す人々が交流し、情報を共有できるコミュニティも増えています。これにより、適切な情報収集が可能となり、自分の権利と義務を正しく理解し、問題が起きた際に適切な対応がよりやりやすくなると思われます。永住権取り消しの最新情報については、公式な情報源や信頼できる情報提供者からの情報収集が肝要です。

最新の法律改正点

最新の法律改正点について。法律改正、特に入管法関連の改正には永住権保有者や永住権を目指す方々にとって重要なポイントが含まれています。
新たな法律が施行される際には、永住権にかかわる法律や規定の変更を把握することが大切です。
具体的な内容については、法務省などが定期的に情報提供しています。

法改正により、申請手続きや条件が変更されることもあるため、最新の情報を把握し、適切な対応を心がけましょう。

まとめ

永住権を取り消される可能性がある場合、まずは冷静に状況を把握しましょう。適切な対応をするために、自分の権利と義務、そして取り消しの要件について理解を深めることが大切です。そして専門家と相談しながら、問題解決に向けた戦略を練ることが必要です。また、永住権の取り消しを回避するために、法令順守や法的なコンプライアンスを確認し、不安定要素を取り除く努力が求められます。さらに行政との円滑なコミュニケーションを図り、問題解決に向けて前向きな姿勢で臨むことも大切です。

この記事の書き手は申請取次行政書士勝見功一
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