経営管理ビザから永住権取得への完全ガイド|要件と手続き
日本で事業を展開する外国人経営者にとって、永住権の取得は安定した事業継続のための重要なステップです。経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)から永住権を取得するためには、一般的なルートと高度人材としてのルートの2つの選択肢があります。本記事では2024年冬時点の最新情報に基づき、それぞれのルートにおける要件や手続きを詳しく解説します。永住権取得により、在留期間を気にすることなく事業に専念でき、さらに生活面での安定性も得られます。特に事業実績が好調で日本での長期的な経営基盤の確立を目指す方にとって、永住権取得は大きなメリットとなります。以下、経営管理ビザから永住権取得までの道のりを、実務的な観点から解説していきます。なお永住申請の概要についてはこちらをご覧ください。経営・管理ビザの概要についてはこちらをご覧ください。
経営管理ビザから永住権取得までの基本的な流れ
経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)とは
経営管理ビザは、日本において事業の経営・管理に従事する外国人に付与される在留資格です。出入国在留管理庁の定める要件として、以下が挙げられます:
- 事業規模要件:500万円以上の出資ないし常勤の従業員2名以上(日本人または永住者等)の雇用
- 施設要件:事業所の実体的な確保
- 経営者要件:経営・管理に従事する活動を行うこと
- 事業の継続性・安定性要件:事業内容の実現可能性および安定性・継続性
経営管理ビザの在留期間について:
- 初回の標準的な在留期間:1年
- 4ヶ月のビザを選択した場合:4ヶ月
(スタートアップビザ利用時の6ヶ月などもあります)
- 更新後:最長5年の在留期間あり(条件は厳しく難しい)
注意:実際の在留期間は申請時の事業計画や経営状況などに基づき個別に判断されます。4ヶ月のビザを選択した場合は4ヶ月の間に会社設立や事業所や事業そのものの準備を行う必要があります。スタートアップビザによる場合もありますが、ここでは詳しい説明は省きます。
永住権(永住許可)の概要と取得メリット
永住権取得のメリットには以下があります:
- 在留期間の制限がなくなる
- 活動制限がなく、事業以外の活動も自由
- 在留資格変更手続きが不要
- 金融機関での融資や不動産取引が容易に
ただし、永住権は無条件で維持できるものではありません。法令順守や納税義務の履行が求められ、長期の海外滞在には再入国許可が必要です。
経営管理ビザから永住権への一般的な申請ルート
一般的な申請ルートでは、以下の基本要件を満たす必要があります:
永住権申請の基本要件
| 項目 |
要件詳細 |
| 在留期間 |
通算10年以上の在留 |
| 素行要件 |
納税、社会保険加入等のコンプライアンス |
| 生計要件 |
安定した事業収入の証明 |
高度人材ポイント制を活用する場合は、要件が緩和される可能性があります。詳細は後述します。
永住権申請の基本要件と経営管理ビザでの特徴
永住権申請に必要な在留期間と継続要件
経営管理ビザから永住権申請を行う場合の在留期間要件について、法務省の永住許可に関するガイドラインでは以下のように定められています:
【一般永住許可申請の在留要件】
- 継続して10年以上日本に在留していること
- うち5年以上は就労資格(経営管理等)での在留であること
- 直近の在留期間が原則として最長のもの(5年)であること(現状は3年で可)
ただし、配偶者が日本人・永住者・特別永住者の場合は、要件が緩和される場合があります。また継続性の判断において、短期の海外出張等は通算在留期間に含まれると考えられますが、どのくらいの期間であるかに注意が必要です。
事業経営における実績・継続性の証明
永住権申請時には、事業の安定性と継続性を証明する必要があります。これは永住権においては「独立生計要件」を満たす事が必要になりますが、経営管理ビザからの申請においては会社の経営状況がこれを左右すると思われるからです:
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経営実績の確認ポイント
- 売上高と収益の推移、債務超過でなくできれば直近2期程度は黒字であることが望ましい
- 従業員の安定的な雇用状況
- 取引先との継続的な関係
- 事業計画の実現性と今後の展望
特に直近2年間の経営状況については重視される傾向と言え、債務超過状態ではかなり厳しい状況と言え、赤字が続いている場合も申請が困難になる可能性があります。
納税・社会保険加入状況の重要性
他の永住申請と同様に個人としての課税証明書・納税証明書や税務署の納税証明書はもちろん必要ですが、さらにコンプライアンスの観点から、会社の申告や納税状況、健康保険・厚生年金保険料の支払いも重要視されます:
| 確認項目 |
必要書類 |
注意点 |
| 申告・納税状況 |
法人の確定申告書の写し |
|
| 社会保険 |
健康保険・厚生年金保険料領収証書(写し) |
|
未納や滞納がある場合は、申請前に必ず解消しておく必要があります。
経営管理ビザでの永住権申請に必要な書類と手続き
申請書類の詳細と準備方法
永住許可申請に必要な書類は、出入国在留管理庁が定める基準に基づき、以下のものが求められます:
【基本的な必要書類】
- 永住許可申請書(写真添付)
- 理由書(永住を必要とする理由を具体的に記載)
- 身元保証書
- パスポート及び在留カードの写し
- 住民税の課税(非課税)証明書及び納税証明書
- 源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び申告復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税に係る納税証明書(その3)
- 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
- 年金記録
- 健康保険納付を証明する書類
- 事業に関する立証資料(後述)
海外から取得する書類を除きすべての書類は申請時から3ヶ月以内に発行されたものが必要です。
経営に関する証明書類の準備
事業実績を証明するために、以下の書類が必要となります:
| 証明項目 |
必要書類 |
| 会社の現況 |
・登記事項証明書
・会社案内・パンフレットなど |
| 事業実績 |
・決算報告書
・確定申告書(法人・個人)
|
申請手続きの具体的な流れ
申請手続きは以下の流れで進められます:
【申請の手順】
1️⃣
事前準備(1-2ヶ月)
- 必要書類の収集と準備
- 理由書の作成
- 各種証明書の取得
2️⃣
申請(1日)
3️⃣
審査期間(6-10ヶ月)
4️⃣
許可後の手続き(1-2週間)
注意:申請から許可までの標準処理期間は6ヶ月程度ですが、案件によって前後する場合があります。申請中に在留期間が満了する場合は、別途在留期間更新許可申請が必要です。
高度人材として経営管理ビザから永住権を取得する方法
高度専門職ポイント制の概要
出入国在留管理庁の高度人材ポイント制を活用することで、通常の永住許可申請よりも短期間での申請が可能となります。
【高度人材ポイント制における優遇措置】
| ポイント合計 |
必要在留期間 |
備考 |
| 70点以上 |
3年 |
申請時と3年前の時点で70点以上を維持 |
| 80点以上 |
1年 |
申請時と1年前の時点で80点以上を維持 |
主な評価項目:
- 学歴(最大30点)
- 職歴(最大25点)
- 年収(最大50点)
- 年齢(最大40点)
- 特別加算項目(最大25点)
「経営・管理活動」にのみ該当する加算項目などもあり、計算する上で注意が必要です。詳細は出入国在留管理庁の高度人材ポイント計算表を確認し、不明点は出入国在留管理庁などに確認するようにしましょう。
経営者としての高度人材要件
経営管理ビザ保持者が高度人材として認定される際の特徴的な評価ポイントとしては経営管理に関する専門職学位(MBA,MOT)を保有していることや、取締役などの地位に因っての加算がある事、年収での加算ポイントの多さなどに特徴があります。イノベーション促進支援措置を受けていることによる加算もあります。
早期永住許可申請の条件と特例
高度専門職としての早期永住許可申請には、以下の条件を満たす必要があります:
【早期永住許可の要件】
- ポイント基準を期間中継続して満たしていること
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すること
注意点:
ポイント基準を期間中継続して満たしていることが必要であるため、定期的なポイント要件の確認が推奨されます。「経営・管理活動」は年齢によってポイント基準が変化しませんが、職歴計算や地位の計算をする場合に注意しましょう。
➡️ 永住権取得のポイント計算表と高度人材制度について知りたい方はこちら[永住権取得のポイント計算表と高度人材制度]
永住権申請における注意点と対策
申請が不許可となりやすいケース
永住権申請において、以下のような状況は不許可となるリスクが高まります:
【要注意ケース】
| カテゴリー |
リスク要因 |
対策・留意点 |
| 財務面 |
・直近2年間の赤字決算
・税金の未納・滞納
・売上の著しい変動 |
・経営改善計画の策定
・税理士との相談
・収益構造の見直し |
| 法令順守 |
・社会保険未加入
・労働基準法違反
・入管法違反歴 |
・コンプライアンス体制の整備
・専門家による法務チェック
・是正計画の実行 |
| 事業継続性 |
・従業員の頻繁な入れ替わり
・事業規模の縮小
・取引先の減少 |
・人材定着施策の実施
・事業計画の見直し
・取引先の多様化 |
事前確認すべきポイント
申請前に以下のチェックリストで準備状況を確認することを推奨します:
【申請前チェックリスト】
✅
基本要件の確認
- 在留期間の通算計算
- 素行要件の充足状況
- 納税証明書の内容確認
✅
事業状況の確認
✅
生活基盤の確認
- 安定した収入の証明
- 住居状況
- 家族状況(該当する場合)
事前準備のポイント:
申請のにあたっては早くから準備を開始し、不明点は早めに専門家に相談することをお勧めします。
専門家への相談タイミング
以下のような状況では、専門家への相談が特に推奨されます:
【専門家相談が推奨される状況】
専門家選定のポイント:
・申請取次行政書士など、資格を持つ専門家を選ぶ
・永住権申請の実績が豊富な事務所を選択
経営管理ビザから永住権取得後の留意事項
永住権取得後の権利と義務
永住権を取得すると、以下のような権利と義務が発生します:
【取得後の権利】
- 在留期間の制限なし
- 活動制限なし(職種変更自由)
- 在留資格変更手続き不要
- 各種金融サービスの利用が容易に
【遵守すべき義務】
- 法令順守義務
(日本の法律・規則の遵守)
- 納税義務
(所得税、住民税等の適切な納付)
- 社会保険加入義務
(健康保険、年金等への継続加入)
- 住所変更の届出義務
(14日以内の届出が必要)
特に2024年の入管法改正によって永住権取り消し事由が追加され、故意による納税や初回保険料滞納による取り消しが可能となったことに注意が必要です。経営状況の悪化時には対応が必要となる可能性があります。
事業継続に関する注意点
永住権取得後も、事業経営者として以下の点に注意が必要です:
| 項目 |
具体的な注意点 |
推奨される対応 |
| 事業の維持 |
・安定した経営の継続
・従業員の適切な雇用維持 |
・定期的な経営状況の確認
・事業計画の更新 |
| コンプライアンス |
・法令違反の防止
・各種届出の適時実施 |
・専門家による定期チェック
・社内規定の整備 |
| 記録管理 |
・経営関連書類の保管
・税務関係書類の管理 |
・文書管理システムの導入
・定期的なバックアップ |
重要:永住権は一度取得しても、重大な法令違反などにより取り消される可能性があります。また、みなし再入国許可で出国した際に1年以内に帰国できなかったために永住権を失うケースに特に注意が必要です。
再入国許可と海外滞在
海外渡航に関する重要な注意点は以下の通りです:
【再入国許可制度】
1. みなし再入国許可
- 出国後1年以内に再入国する場合
- パスポートと在留カードの携帯が必要
- 出国時に「みなし再入国許可」の意思表示が必要
2. 通常の再入国許可
- 1年を超える海外滞在の場合に必要
- 最長5年間有効
- 出入国在留管理局での事前申請が必要
注意事項:
- みなし再入国許可で1年を超過すると永住権が失効(例外措置無し)
- 長期の海外滞在は事前に計画を立てること
- 期限切れが近い場合は早めの帰国を推奨
まとめ:経営管理ビザから永住権取得までのポイント
経営管理ビザから永住権を取得するためのポイントを以下にまとめます:
【重要ポイント】
- 一般永住許可申請には10年以上の在留期間が必要
- 高度人材ポイント制を活用すれば最短1年での申請が可能
- 安定した事業経営とコンプライアンスの遵守が不可欠
- 申請前の十分な準備期間の確保が重要
- 必要に応じて専門家への相談を検討
重要資料・参考リンク集
【公式情報源】
| 資料名 |
概要 |
リンク |
| 永住許可に関するガイドライン |
法務省による永住許可の基準と手続き |
公式サイト |
| 高度人材ポイント制 |
高度専門職に関する制度説明 |
公式サイト |
| 在留資格「経営・管理」 |
経営管理ビザの要件と手続き |
公式サイト |