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多くの国で同性婚が合法化されつつある現在、国境を越えた同性カップルの問題が浮上しています。同性婚の合法化が進む一方で、他国での同性婚の認知や在留資格(ビザ)取得が難しいことが問題となっています。本記事では国際的な同性婚に関連する在留資格の課題とその解決策について解説します。
はじめに、同性婚に対する在留資格の問題点や課題を理解することがなぜ重要なのかです。これは同性婚が法的に認められていない国、特に日本においては外国人パートナーが日本での滞在許可を得ることが非常に困難となるからです。在留資格が取得できない場合、パートナーと分かれて生活することを余儀なくされ、精神的、経済的負担が増す可能性があります。
現在の日本においては法的な婚姻に基づく場合、日本人(永住者)の配偶者であれば「日本人(永住者)の配偶者等」、就労系の在留資格(ビザ)であれば「家族滞在」の在留資格を得ることができます。
性に関する価値観が多様化したと言われる時代となり、日本以外の海外の一部地域では同性婚を認めている国も徐々に増えている状況にあります(2023年時点で30カ国以上存在すると言われています)。
しかし日本の家族について定めている民法の家族法部分では同性同士の婚姻を認めておらず、日本においては同性婚は認められていません。したがって法的な婚姻と言えないため同性婚では上記在留資格(ビザ)を取得することはできません。
自治体レベルでは東京の渋谷区などでパートナーシップ制度が広がりつつありますが、あくまでも自治体レベルで「結婚に相当する関係」と認められるだけで、法的な効力はありません。
同性婚に係る在留資格の問題点の抜本的な解消には法改正や制度の見直しが不可欠であり、それが実現されることで多くのカップルが不安や困難を抱えずに生活できるようになることが期待されますが、実現は今のところ見通せてはいません。それでは法改正などがなされるまで同性婚の外国人パートナーと短期滞在以外の長期間に渡り日本で共に暮らすためには在留資格(ビザ)をどうすればいいのでしょうか、最近の同性婚を取り巻く情勢の変化や入管の動きと共に説明していきます。
同性婚のパートナーについて配偶者ビザを取得することができない以上、他の長期間の滞在を可能とする在留資格(ビザ)の取得を検討する必要がありました。
そこで、技術人文国際や経営管理といった就労系の在留資格(ビザ)を取得する、という方法が外国人にとって主流な選択肢であったと言えました。その理由は就労系の在留資格は比較的手続きが明確であり、学歴やキャリアのある外国人からすれば企業の雇用が得られれば比較的取得しやすいためです。また、就労ビザは経済的に安定していることも多くの外国人が選んでいた理由でしょう。長期滞在では他に留学や文化活動などの就労系以外の在留資格(ビザ)も考えられるわけですが、やはり生活をしていくために収入を得なければならないことや、学校にずっと通い続けるわけに行かないなどの理由から就労系の在留資格(ビザ)を取得することが主流であったのでしょう。
しかし就労系の在留資格(ビザ)にもまた様々なマイナス要素があり、永住を目指す場合には配偶者ビザよりも大幅に在留期間の条件が長くなること、何よりもやはり結婚している配偶者と在留資格で認められないのは当事者の方にとって厳しいと言えるでしょう。
近年人権意識の高まりや国際的な圧力により司法の判断が全体としては同性婚を含むパートナーシップの権利を認める方向に動いているように思われます。外国人同士の同性婚配偶者について、平成25年人道的・倫理的な観点から入国管理局がそれまでと一線を画す判断に基づく通達をだしました。同性婚の配偶者に対しても在留資格を認めるという内容のものでした。司法の変化に対応して入国管理局も柔軟な方針に変更しつつあるようにも思えるものです。
ただ在留資格を認めると言っても、家族滞在や定住などの在留資格ではなく、「特定活動」というものです(特定活動というのは従来の法や規則に定められた在留資格の範囲ではカバーしきれない外国人について、その範囲をカバーするためのやや特殊な在留資格と考えてもらえばよいかと)。
そして注意が必要なのは(ここは専門家以外には難しい内容になるので詳しくはお問い合わせください)この在留資格は告知外特定活動といわれるもので在留資格認定証明書交付申請では申請することができず、そのため短期滞在などで一旦来日して在留資格変更申請を行う必要があることです。
しかしここで問題となるのはこの入管の取り扱いはあくまでも外国人同士の同性婚配偶者についてのものであり、日本人の同性婚配偶者である外国人には適用されなかったことでした。
この日本人と外国人同士の場合の取り扱いの区別については先述の通り日本の民法では同性婚を認めておらず、日本では有効な婚姻と認められないから、と説明されてきました。
こうした流れを変えるきっかけとなったかもしれないと思われるのが2022年11月30日の東京地方裁判所の「現行法上、同性愛者についてパートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害であり、個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとはいえず、憲法24条2項に違反する状態にある」とする判決でした。
この判決が出た後、日本人男性と米国で同性婚をし「定住者」としての在留資格を国に求めて訴訟で争っていた米国籍の方に対して東京出入国管理局は2023年3月10日、「特定活動」の在留資格を許可しました(東京新聞の記事)。
この入管の判断には二つポイントがあると思われます。一つが原告の方が求めていた「定住者」の在留資格ではなく、「特定活動」の在留資格の許可を出したということ。もう一つはこの判断が今後の入管の基準となり、今後同様の事案では基本的に同様の判断がなされるようになるのか、ということです。
この入管の判断からまだそれほど日が経っていないこともあり十分な実務の積み重ねができているとは言えないので、日本人と外国人との同性婚の場合も「特定活動」の在留資格の許可が下りる、とは言い切れないのですが(最寄りの入管に問い合わせたところ、申請の受付はするとのことでした)、以前と違って可能性は出ている分、前進とは言えるでしょう。
同性婚のパートナーについて前進がみられる一方、パートナーに連れ子がいる場合など、まだ難しい問題が残されています。
現状このあたりの問題について明文化される予定はないようなので、この後も実務の運用次第、という状況が続くと思われます。そのような場合でもスムーズに在留資格を取得できるよう、法的手続きや制度の整備が求められています。