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日本で働くための在留資格を検討する際、「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」のどちらを選ぶべきか迷われる方も見られます。企業の採用担当者の方からも、「どちらの在留資格で採用すればよいでしょうか」という相談を受けることがあります。
結論から申し上げると、大学や日本の専門学校を卒業している方、あるいは実務経験が豊富な方は、原則として「技術・人文知識・国際業務」を選択すべき、となります。
特定技能は、技人国の要件を満たさない場合の「補完的な選択肢」として設計された制度といえるものであり、将来の永住権取得や家族帯同、キャリアの自由度において、技人国と比べて大きな制約があります。本記事では、両者の違いを具体的に解説し、どのようなケースでどちらを選ぶべきかを実務目線で整理します。
「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」は、どちらも日本で働くための在留資格ですが、制度設計の思想が根本的に異なります。
技術・人文知識・国際業務(技人国)は、高度な知識・技能を持つ外国人を日本人と同等の専門職として受け入れるための在留資格です。一方特定技能は、人手不足が深刻な特定分野において、一定の技能を持つ外国人を受け入れるために新設された制度で、「技能実習(育成就労に移行予定)」の延長線上に位置づけられています。
このため、特定技能1号には以下のような構造的な制約があります。
1号では永住権申請に必要な「就労資格での在留期間(5年)」としてカウントされない
家族(配偶者・子)を日本に呼ぶことが原則できない(特定技能1号)
支援機関による定期的な管理が義務付けられており、私生活への介入度が高い
在留期間の上限が通算5年とされている(2号への移行には高いハードルがある)
もし、あなたが大学(海外・日本いずれも)を卒業している、または日本の専門学校(専門士)を卒業している、あるいは関連分野での実務経験が10年以上あるのであれば、技人国の要件を満たす可能性が高く、わざわざ上記のような制約を受け入れる必要は基本的にはありません(他にとりあえず特定技能にする必要のある理由があれば別ですが)。
以下、具体的な違いを5つの観点から解説します。
将来的に日本で永住権を取得したいと考えている方にとって、最も重要なのが「在留資格の種類が永住審査にどう影響するか」です。
技人国は当然ですが就労資格として永住権申請の居住要件にカウントされます。原則として、引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格で5年以上在留していることが永住許可の基本要件とされています。 技人国で5年間働き、更新を重ねて10年を経過すれば、永住権の申請が視野に入ります。
一方、特定技能1号の期間は、永住申請における「就労資格での在留期間」として原則カウントされません。 出入国在留管理庁のガイドラインにおいて、特定技能1号は技能実習と同様に「技能習得を主眼とした在留資格」と位置づけられており、永住要件の就労期間からは明確に除外されています。 つまり、特定技能1号で5年間働いても、永住権申請の計算上は「就労経験0年」として扱われるリスクがあります。永住を見据えるのであれば、2号移行が比較的容易に見込めるのでもない限り最初から技人国を選択する方が望ましいでしょう。
日本での生活を長期的に考える場合、家族を呼び寄せられるかどうかは非常に大きな問題です。
技人国の在留資格を持つ外国人は、配偶者や子どもを「家族滞在」の在留資格で日本に呼び寄せることができます。家族一緒に日本で生活し、配偶者も一定の条件下(資格外活動許可)でパートタイム就労などが可能です。
特定技能1号では、原則として配偶者や子どもを日本に呼ぶことができません(※)。 2023年の制度改正により、特定技能2号の対象分野が大幅に拡大(製造、農業、外食など11分野へ)され、2号になれば家族帯同が可能になりました。しかし、1号から2号へ移行するには熟練した技能試験への合格と実務経験が必要であり、誰でもすぐに移行できるわけではありません。 現状の1号では「家族と離れて単身で日本に滞在する」ことを前提とした制度設計であるため、結婚している方や将来的に家族を持つ予定の方には、大きなデメリットとなります。
※ 一応例外的に家族と共に日本で暮らせるケースも2パターンありますが、新たに日本に呼ぶことができるわけではありません。働く上で、キャリアチェンジや転職の自由度も重要な要素です。
技人国は、学歴や職歴と関連性がある限り、幅広い業種・職種への転職が可能です。例えば、大学で経営学を学んだ方が、営業→マーケティング→経営企画といった形でキャリアアップしていくことが認められます。 転職時には在留資格変更の手続きではなく、「所属機関の変更届出」を出すだけで済むケースも多く、職業選択の自由がある程度あるといえます(※)。
※ 基本的に転職有りの在留期間更新申請は新たな職場が要件に適合しているかの審査となるため、在留資格変更と同等の内容の審査であることは注意すべきです。特定技能は、指定された特定産業分野(介護、ビルクリーニング、製造3分野、建設、農業など)の業務に限定されます。 転職は同一分野内(または試験に合格した別分野)であれば可能ですが、前期要件を満たしていない分野をまたぐ自由な転職は原則できません。また、転職時には新たな雇用先で「支援計画書」を作成し、入管への変更許可申請が必要になるなど、手続きが非常に煩雑です。 プロフェッショナルとして自律的にキャリアを形成したい方にとっては、特定技能の枠組みは窮屈に感じられるのではないでしょうか。
雇用する企業側の視点でも、両者には大きな違いがあります。
技人国の外国人を雇用する場合、特別な支援義務は課されません。日本人社員と同様に、労働法規を遵守した雇用管理を行えば十分です。
特定技能1号では、雇用主(または登録支援機関に委託)による「義務的支援」が法律で定められています。具体的には、以下のような支援が必要です。
事前ガイダンス、住居確保・生活オリエンテーション
日本語学習の支援
定期的な面談(3か月に1回以上)と行政への報告
公的手続きの同行、苦情・相談対応
多くの企業はこの支援業務を登録支援機関に委託しますが、その費用は月額2万〜3万円×人数が相場と言われており、採用コストとは別に継続的なランニングコストが発生します。 また、外国人本人にとっても、定期面談や私生活の報告義務があることで「管理されている」という感覚を持ちやすく、精神的な負担になることもあるでしょう。
長期的なキャリア形成の観点から、在留期間の上限も重要です。
技人国には在留期間の上限がありません。更新を続ける限り、定年まで日本で働き続けることが可能です。更新時には勤務実績や納税状況などが審査されますが、問題がなければ更新が認められ、3年や5年の在留期間が付与されることも一般的です。
特定技能1号の在留期間は、通算5年が上限とされています。 (※最新の運用では、産休・育休などの期間を5年のカウントから除外する特例や、2号試験受験のために最大1年の延長を認める措置なども設けられ始めていますが、あくまで「5年+α」の枠組みです) 5年経過後は、特定技能2号に移行するか、帰国するか、他の在留資格に変更する必要があります。2号への道は拡大されましたが試験難易度等を考慮すると、全員が必ず移行できる保証はありません。
ここまで読むと、「特定技能にはデメリットしかないのか?」と思われるかもしれません。しかし、特定技能が適している(あるいは他の選択肢がない)ケースも存在します。
学歴要件を満たさない場合 大学・専門学校の卒業歴がなく、実務経験も10年未満の方は技人国の要件を満たさないため、特定技能が現実的かつ有効な選択肢となります。
技能実習からのステップアップ 技能実習2号を良好に修了した方は、試験免除で特定技能1号に移行できます。帰国せずに引き続き日本で働きたい場合の移行先として機能します。
現場作業がメイン業務の場合 製造ラインでの組立作業、建設現場での施工補助、ホテルのベッドメイキングなど、「現業(単純労働)」とされる業務は、技人国では従事が認められません。このような現場業務に従事したい場合は、特定技能を選択する必要があります。
当事務所では、「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」のどちらの申請が望ましいかについてはご本人のキャリアパスを慎重にヒアリングした上で選択が望ましいと思われる在留資格のアドバイスをさせていただいています。 特定技能を選ぶことで将来の永住権取得や家族との生活が遠のいてしまうケースも考えられるためです。
一方で、「現在特定技能で働いているが、より安定した在留資格に変更したい」「将来の永住や家族帯同を見据えたビザ戦略を相談したい」といったご相談には特に力を入れて対応しております。
すでに特定技能1号で日本に在留している方でも、以下の要件を満たせば技術・人文知識・国際業務への変更が可能です。
学歴または実務経験の証明 大学(本国・日本)または日本の専門学校(専門士)を卒業していること、または関連分野での実務経験が10年以上あること。
職務内容の専門性 新たに就く職務が、学歴や職歴と関連性があり、「技術・知識・国際業務」に該当すること。 単純な現場作業ではなく、現場管理、品質管理、通訳翻訳、設計、企画などの専門性が求められます。
日本人と同等以上の報酬 給与が、同種の業務に従事する日本人と同等以上であること。
特定技能1号の在留期限が切れる前に、在留資格変更許可申請を行います。職務内容が明確に「専門職」であることを証明できる雇用契約書や職務記述書(Job Description)、理由書などを準備する必要があります。
「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」は、表面的には同じ「働くためのビザ」に見えますが、実際にはキャリアの自由度、家族帯同の可否、永住権への道筋において、決定的な違いがあります。
もしあなたが大学や日本の専門学校を卒業しているのであれば、安易に特定技能を選ぶことは、将来的なキャリアと人生設計において大きな損失となる可能性があります。
「自分の経歴で技人国が取れるかわからない」「現在特定技能だが、もっと自由度の高い在留資格に変更したい」という方は、まずは専門家による診断をお勧めします。 当事務所では、就労ビザ・永住・家族ビザに関する豊富な実績をもとに、あなたの状況に最適な在留資格の選択と取得戦略をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。